阪急沿線文学散歩

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山崎豊子の驚くべき取材力・理解力(『華麗なる一族』)

 山崎豊子さんは「私の作品は、取材が命」と語るほどしっかりした取材をされています。銀行の合併をテーマにした『華麗なる一族』の取材ノートでは、銀行や大蔵省の取材の難かしさを述べられていますが、作品を読むと鉄鋼業界の取材にも熱心だったことがよくわかります。

 例えば阪神特殊鋼の工場や操業の描写、様々なエピソードは、鉄鋼業に携わった者が読んでも、現実味があり、取材の細やかさに驚かされます。
 まず万俵家から見える阪神特殊鋼の工場風景。


 これは山陽特殊製鋼がモデルとなった阪神特殊鋼の場所を、灘浜の神鋼神戸製鉄所に移し、高炉建設の様子を次のように描いています。
<裏山の谷川から引いた流れにかかっている石橋のところまで来ると、眼下に芦屋、岡本、御影の住宅街が一望のもとに見渡され、その先に灘浜臨海工業地帯が拡がって、工場群の煙突が林立しているのが見える。
 「臨海工業地帯の東端がうちの会社ですが、海岸よりに一際高く聳えたっているのが高炉です。そしてその横の円筒状の高い構造物が熱風炉、その向こうが転炉の建屋、向かいは送風機の建屋―」鉄平は、この一年余、全力を傾け、今一息というところに迫った高炉建設現場を一つ一つ、いとおしむような熱っぽさで説明した。>
 これは多分、神戸製鋼神戸製鉄所に取材して書かれたものと思われますが、高炉・熱風炉・転炉などの建屋を正確に描写しており、山崎豊子さんはきっと神戸製鉄所の設備を見ながら説明を受けたのでしょう。

上の写真は以前の神戸製鉄所。中央に高炉が見えています。

 時代の移り変わりは早く、2017年10月末に神戸製鋼所神戸製鉄所の高炉、製鋼工場は休止し、加古川製鉄所に集約されました。
最近の航空写真がありました。高炉と周辺設備が撤去されて更地になりつつあります。

かろうじて中央に熱風炉がまだ解体されず残っているようです。その後ろに見えるのは、転炉・連続鋳造設備などがある製鋼工場で、ここも既に休止されており、この建物もやがて撤去されるのでしょう。
 この高炉跡地には発電規模130万kWの火力発電所が増設される予定です。
 この写真の説明を長々としたのは、あたかも小説の阪神特殊鋼が高炉建設を始める前の姿を彷彿とさせるからです。

在りし日の高炉、熱風炉、手前が製鋼工場建屋。

3号高炉建設直後と思われる写真もありましたが、これも阪神特殊鋼が建設した高炉と熱風炉(4本の円筒状の青く塗られている設備)のように見えてきました。

小説ではこの熱風炉が爆発するのですが、次回にさせていただきます。




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阪急沿線の街にゆかりのある小説や随筆、アニメの舞台を訪ね、当時の景色や登場人物に思いを馳せるセンチメンタル散歩です。震災以降、街並みは大きく変わりましたが、歴史ある美しい景観を守る一助になればと思っています。

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