山口を歩く

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週刊朝日ムック「さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん」

 尼崎の在宅医である長尾クリニック・長尾和宏医師のブログを読んでいる。最近の記事で週刊朝日ムック「最期まで自宅て診てくれるいいお医者さん」が紹介されていた。
 在宅ケアが目下の関心事である。わけても在宅医選びはケアマネ選びと並んで在宅ケアの根幹であると思っている。このムック本の狙いはいい在宅医選びのための実用書である。特に国の要件を備えた全国の在宅療養支援診療所の内、看取り件数等の一定の基準によりリストアップした2014診療所を掲載している点が「売り」である。11月14日の発行のこの本を事前にネット予約して入手した。
 130頁の内45頁に渡って「看取り実績のある診療所リスト」が掲載されている。最寄りの診療所では神戸市北区有野町の松本ホームメディカルクリニックが掲載されていた。福祉フォーラムで講演してもらった川崎医師の西宮市越水町の川崎医院も掲載されている。
 もちろん診療所リスト以外にも在宅医療に関する記事が満載である。長尾医師の「平穏死10の条件」のエッセンス、リビングウイルの勧め、在宅医療を始める前の基礎知識(家族ケア、終末期の迎え方、がん・認知症・脳卒中の病態別の在宅医療の流れ等)、在宅医療にかかるお金、最後の迎え方などである。これ一冊で在宅医療の全貌が把握できる。これで税込980円はいかにも安い。お勧めである。

 




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浅田次郎著「五郎治殿御始末」

 書棚の読みたい作家の作品の再読を読み尽した。やむなく個々の作品をさがして再読している。古希を越えた身では選択は年相応の好きなジャンルに限られる。かつて愛読した推理小説や海外の作品には手が出ない。
 そんな経過で手にした作品が浅田次郎著「五郎治殿御始末」だった。この6篇の短編小説集は千年続いた武士の時代の幕末維新の幕引きを巡る物語である。そうした特異なテーマに絞って様々な物語を紡ぎ出すこの作家の力量に舌を巻いた。
 なんといっても圧巻だったのは表題作の「五郎治殿御始末」だった。幕末に徳川政権に殉じた桑名藩の事務方上士であった岩井五郎治が主人公である。桑名藩の「始末」をやり遂げた後の自身の「始末」を鮮やかに描いている。桑名藩と岩井家と残されたたった一人の肉親の孫の「始末」を終えて行方知らずとなっていた五郎治の消息が孫のもとに届けられる。老骨に鞭打って五郎治は西南戦争に加わり白兵戦の中で討ち死にしていた。孫に託された遺品は生前に周囲から嗤われていた「付け髷」だった。この付けチョンマゲに込められた意味を作者は孫の述懐として次のように語る。「侍の理屈は、一筋の付け髷に如かぬ。侍の時代など忘れて、新しき時代を生きよ」。
 物語の最後に作者自身の想いが語られる。「もし私が敬愛する明治という時代に、歴史上の大きな謬りを見出すとするなら、それは和洋の精神、新旧の理念を、ことごとく対立するものとして捉えた点であろう]
。同感である。

 



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長尾和宏著「痛くない死に方」

 長尾和宏著「痛くない死に方」を読んだ。これで著者の7冊目の著作を読んだことになる。私の地域活動の目下の主要なテーマは「在宅ケア」である。そのための多くの知識と情報を長尾医師の著作から得ている。それだけに現状では著者はもっとも信頼を置いている医師といえる。
 この著作は既読の「平穏死10の条件」の4年後のリニューアル版である。在宅医としての4年間の経験の蓄積が前作以上に示唆に富んだ記述となって展開されている。以下の指摘に関心を持った。
 ・痛くない死に方には緩和医療の知識と理解のあるかかりつけ医を見つけておくこと。緩和ケアがしっかりできないと在宅看取りには至らない。それにはかかりつけ医の在宅看取り数が目安となる。
 ・認知症終末期の平穏死の条件は「最後まで口から食べること」「胃ろうを選択しないこと」
 ・平穏死に関わる有益な情報の紹介。医師の在宅看取り実績数を公開した「自宅で看取るいいお医者さん」というムック本。平穏死に取組む「日本慢性期医療協会」とその会員を掲載したHP(近隣での会員施設には北摂中央病院と船坂の介護老人保健施設・ふるさとの家がある)
 ・施設を終の棲家として決めたなら終末期に病院に搬送せず平穏死を迎えさせてくれる施設を選ぶこと
 ・「在宅看取りは警察に届けねばならないという誤解」は医師法20条の誤解」。「診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合」は主治医が後日に往診して死亡診断書を発行できる」というのが医師法20条の解釈。

 



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 読まれたんですね 私の店の近くの狭い お菓子屋さんの二階で開院されて今は元銀行の跡地で開業されていてDRも多数おられて殆ど年中無休でされています。

[ モンセ分店薬局 薬剤師徒然日記 ] 2017/10/08 7:28:58 [ 削除 ] [ 通報 ]

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NHKドキュメンタリー”赤秋〜仲代達矢・喪失からの出発〜”

 録画していたドキュメンタリー番組を観た。12年前に初回放映された「赤秋〜仲代達矢・喪失からの出発〜」という番組だった。
 あらためて仲代達矢という稀有な役者の偉大な足跡に共感した。撮影当時72歳だった彼も今や85歳を数える。撮影の8年前に最愛の妻であり同志でもあった宮崎恭子を膵臓癌で亡くしている。番組は恭子を亡くした後の喪失感からようやく脱して「老い」をテーマとした舞台に挑む仲代の姿を追っている。
 妻・恭子が立ち上げた俳優養成塾である無名塾を引き継いで若い俳優たちを育てる姿が描かれる。仲代の厳しく苛烈な指導を恭子が温かくサポートするという役回りが、恭子亡き後は仲代自身がその両方を使い分けながら指導しているという塾生の言葉が印象的だ。同志であった妻の役回りも引き受けながら喪失感に立ち向かっていたのだろう。
 仲代は「赤秋」という言葉を好んで使うようだ。「青い春(青春)」に対峙した意味合いなのだろう。燃えるような秋をひた走る自身の想いを重ねているのだろうか。
 久々に見応えのあるドキュメンタリーを味わった。

 



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長尾和宏著「薬のやめどき」

 在宅医・長尾和弘氏の著作「薬のやめどき」を読んだ。在宅ケアについての学習を重ねるに従い、現代医学の薬物治療への依存度の高さに疑問が深まった。漢方は別にしても薬にはなにがしかの副作用が避けられない。多剤投与の弊害の最大の問題点である。
 この著作は長尾氏のかねての主張を集大成したもので大いに共感した。全体が二つのパーツで構成されている。第1章は降圧剤、糖尿病薬、抗がん剤、抗認知症薬、睡眠薬、胃腸薬等、個々の治療薬ごとのやめどきのサジェスチョンである。第2章では多剤投与に流される今日の医療界の背景や事情を在宅医の立場から断罪する。「薬には必ず副作用がある」「臓器別縦割り医療の弊害」「お薬ムラとお薬利権」等々。
 私は7年前から降圧剤を服用している。降圧剤は一度飲み始めたら止められないという説を素朴に信じていた。当初はアムロジン2.5mg2錠を毎朝服用していたが、その後ジェネリックのアムロジピンに切り替え更に1年前からはかかりつけ医のためらいを押し切って1錠に減量した。血圧は服用を始めた頃の155-105をピークに現在は135−75と安定している。減量を申し出た時は130ー70だったが、減量直後の1ケ月も135−73と著しい変化はなかった。ちなみに服用薬のアムロジン(アムロジピン)はこの著作でもお勧めの降圧剤として紹介されている。
 「薬のやめどき」もさることながら著作の中でしばしば語られる「やめどき」という言葉が気に入った。人はしばしば始めることに関心が深い。次々に始めた結果、生活ががんじがらめになることも多い。古希を越えて終活が迫られている。今取り組んでいる様々な活動は多岐に渡る。「やめどき」を真剣に考えなければならない。



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興味深い話です。後半の「やめどき」、同感です。

[ akaru ] 2017/09/20 15:09:29 [ 削除 ] [ 通報 ]

akaruさんとは共通の問題意識が多いですね。「薬のやめどき」に続いて同じ著者の「痛くない死に方」を読んでいます。

[ 明日香 亮 ] 2017/09/21 7:20:53 [ 削除 ] [ 通報 ]

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乙川優三郎「武家用心集」

 乙川優三郎著「武家用心集」を再読した。様々な制約や仕来りに覆われた息苦しい武家社会を生きる8人の武家の男女の姿を描いた短編集である。それぞれの物語がさりげない日常を切り取って情感豊かに紡がれている。読後の余韻がじわっと心に沁みる珠玉の短編集である。
 巻末の解説が乙川優三郎という作家を巧みに表現している。「乙川の小説は思想が主題ではない。論理が主題なのでもない。人間の心の最も奥底に潜んでいる感情ないし情緒に形を与え、日本語の繊細な調べに乗せること、それが乙川の本当の目的ではないだろうか。(略)乙川優三郎にとっては、まず『言葉ありき』なのだ。言葉を核として、物語世界が生成され、醸成されていく。すなわち文学のあるべき姿がたち顕れてくる」。共感できる解説だった。
 1953年生まれの乙川優三郎は63歳である。その年齢の割に著作はそれほど多くない。むしろ寡作と言ってよい。20冊に満たない時代小説は読み尽した。数編の現代小説を読むことの逡巡がある。時代小説で培われた彼のイメージが壊されるのではないかという危惧がある。それほどに彼の時代小説は魅力的である。

 



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夏場の北海道マラソンを堪能した

 テレビ番組表にマラソンの文字を見つけた。この猛暑にマラソン?どうせマイナーな大会だろうと思ったが、東京五輪マラソン代表選考対象レースでもある本格的な北海道マラソンだった。
 午前9時札幌大通公園スタートのレースをテレビ中継で満喫した。男女が同時スタートし、それぞれのレース展開を二重に味わえる。実際にレースは男女それぞれにドラマ性を帯びた見応えのある展開だった。
 このレースのもうひとつの興味は東京五輪選考会への出場権をかけたゴールタイムである。男子は1位で2時間15分以内か2〜6位で2時間13分以内、女子は1位で2時間32分以内か、2〜6位で2時間30分以内に入ることが条件となる。
 男子は序盤からスローペースで終盤まで設定タイム以内のゴールは絶望的だった。ところが終盤に抜け出した村沢明伸が懸命にスピードアップした。2時間15分の設定タイムをクリアできるかどうかゴール直前まで手に汗握る展開となった。結果的に2時間14分48秒で優勝し出場権を獲得した。
 女子は序盤から設定タイムを上回るペースで何人が2時間30分以内でゴールできるかという期待に満ちたレースとなった。優勝争いは後半に野上恵子が抜け出しそのまま独走してゴールするかに見えた。ところがいつの間にかペースを落とした野上をマイペースで刻んだ前田穂南が追い上げ終盤に一気に抜き去りそのまま2時間28分48秒で設定タイムを悠々とクリアしてゴールした。残るは野上が設定タイムをクリアできるかにかかった。こちらもギリギリのタイムだったが最後に惜しくも10秒余りオーバーし出場権獲得はならなかった。
 苛酷な夏場のマラソンでありタイム的には期待薄だったが、五輪出場権を絡めた設定タイムという仕掛けが思わぬ興趣をもたらした。



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乙川優三郎「冬の標」

 乙川優三郎の「冬の標」を再読した。江戸時代のしがらみや仕来りに縛られた女性の自立を描くことでは定評のある作者の代表的な作品と言える。
 この物語の主人公は幼い頃から絵を描くことに魅せられ13歳の時に南画の画塾に入門し、生涯を南画ともに生きた明世である。自身の想いとは別に世間は明世に自由に絵を描くことを許さない。家に縛られ意に染まぬ結婚を強いられ、無理解な夫が若くして亡くなった後は20年に渡って息子を育て姑に仕えながら家を守る生活をおくる。明世の意に染まぬ生活をストイックに過ごす支えになったのは細々と続ける南画の世界だった。
 息子が一人前に育ち姑を看取り明世にようやく自由に絵に生きる境遇が訪れる。その頃に画塾の幼馴染みで心を許し合った塾生・修理との出会いが待っていた。二人で絵と一緒に生きることを約束したのもつかの間、修理は藩内の抗争であっけなく命を落とす。ここに至って明世は息子や実家や画塾といったあらゆるしがらみを断ってひとり江戸で絵の世界を生きることを決意する。
 この作品の文庫本表紙には南画の墨絵が描かれている。雪景色の中で二羽の鴉が枝に寄り添う風景である。作品のラストシーンは明世が渡し舟で江戸に向かって出立する場面である。折しも降りだした雪の中で「雪が降ったら、二羽の鴉を描きましょうか」という修理と交わした約束を思い出す。無意識に矢立てと紙を取り出し心に現れた二羽の鴉を描き始める。美しい場面の結末だった。

 



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八上俊樹著「介護施設の花嫁」

 八上俊樹著「介護施設の花嫁」同じ住宅街の同僚民生委員さんから「介護施設の花嫁」という書籍を頂いた。つどい場”あん”でお会いした民生委員さんの友人であるご婦人の息子さんの著作である。
 さっそく読んでみた。埼玉県下で運営されている六つの介護施設「ソレアード」を舞台とした様々なエピソードが物語風に綴られている。そのエピソードの紹介を通してソレアードが目指し、実際に実現している利用者に寄り添った運営の実態がいききと伝えられている。
 著者は施設運営の当事者でなくソレアードの顧問会計士である。ソレアードの代表から「ソレアードの歩みを本にして残せないか」と相談されたのが著作のキッカケだという。それだけにし運営当事者でない距離を置いた立場から客観的で冷静なタッチで物語が紡がれている。
 5章からなる物語はどれも人物や動物が主人公として展開する。ソレアードの施設内で結婚式を挙げたスタッフの花嫁、施設内で皆の尊敬を集めまとめ役となっている「委員長」と呼ばれる利用者、ダイちゃんと呼ばれみんなのアイドルになっている利用者の飼い犬、徹底して利用者に寄り添った介護というソレアードの原点と基礎を築いた「介護の鉄人」等々。
 何よりも共感し、感動した点が二つある。ひとつはソレアードが積極的に利用者の看取りを受入れている点である。既に60人もの利用者の看取りを行ってきた。終の棲家として入所した筈の施設で看取りを拒否され緊急入院する事例が多い中でこれは特筆すべきことである。しかも看護師である医療看護の責任者がスタッフと一緒になって家族のように見送る環境を整える。
 今ひとつは「利用希望者を絶対に断らない」という点である。周囲に迷惑をかけたり、経済的に豊かでない利用者はしばしば入所を断られるのが介護業界の現状だ。だけどソレアードは断らない。今まで一人も断ったことがない。これもまた驚くべきことだ。
 介護施設のあるべき姿をあらためて教えられた一冊だった。

 



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乙川優三郎著「かずら野」

 乙川優三郎の「かずら野」を読んだ。文庫本にして320頁の作品の最後の2頁のために綴られた物語だと思った。その劇的で感動的なラストに向けて延々と続く物語は、裏返せば少々退屈で苛立ちすら覚える展開だった。
 貧乏な足軽の娘・菊子の奉公に出された先の若旦那・富治との出奔と流転の物語である。健気でひたむきで誠実な菊子と短気で身勝手で不実な富治のかりそめの夫婦関係に、菊子の幼馴染みである高潔な人柄の清次郎が絡んでくる。
 好みで言えば乙川作品の中では駄作の部類に入る。ラストにむけた前段の展開が冗長に過ぎるし起伏に乏しい。それでも乙川優三郎という作家の作品は今尚再読するに値する。

 



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明日香 亮
プロフィール
山口は豊かな自然と歴史や伝統に育まれた街である。散歩道で目にする四季折々の風景や風物詩を綴ってみたい。
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