山口を歩く

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学童保育の二つの壁

 福祉ネットの事業目的に「子育て支援」を追加して以降、関係する様々な地域課題が見えてきた。
 そのひとつに「学童保育」問題がある。学童保育とは、昼間に共働き等で保護者が家庭にいない小学生児童(学童)に放課後の遊び場や居場所を提供する保育事業である。学童保育には二つの壁があると言われる。「小1の壁」と「小4の壁」である。
 「小1の壁」とは子どもが小学生になった時に保育園から学童保育への移行に伴って訪れる。夜間の延長保育も可能な保育園から限られた延長保育しかない学童保育への移行はワーキングマザーの働き方に制約をもたらす。ニーズをカバーしきれない地域では学童保育そのものを利用できない場合もある。
 「小4の壁」とは自治体が運営する学童保育の多くが小学校3年生までであることから、子どもが4年生になると放課後の居場所や預け先がなくなる事態を迎えることである。ただ2015年4月から国の施策で学童保育の対象が小学6年までに拡大された。ところがその実施については自治体に委ねられており多くの自治体では、施設面の制約や人材確保の困難さから尚3年生のママである。
 福祉ネットとして学童保育のこの二つの壁にどのような対応が可能か検討してみたい。



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人生の入口、出口の苛酷な環境

 福祉ネットの事業目的に「子育て支援」を追加して以降、子育て問題に向き合う機会が否応なく増えてきた。子育て問題を理解するにつれ、高齢者問題のテーマに驚くほど類似していることに気づかされた。
 何よりも双方の問題に共通する施設や人材の絶対的な不足がある。高齢者の介護施設と介護者、乳幼児の保育所と保育士それぞれに絶対数の不足が著しい。その背景には、介護士と保育士の労働条件の低さがあることは明らかである。その結果、多くの待機老人と待機児童を生みだしている。
 施設やマンパワーの絶対数不足はサービスの質の低下を招き、時に受給者である高齢者と乳幼児に「虐待」という苛酷な環境を強いている懸念がある。家庭内での「老人虐待」と「児童虐待」は格差社会と貧困の深刻化の裏返しという共通項がある。
 経済界の意向を重視する経済至上主義の長期政権が続いている。福祉は置き去りにされ、市場原理の規制緩和が格差と貧困を増幅させている。そのしわ寄せを真っ先に受けるのが高齢者や乳幼児という社会的弱者なのだろう。日本は人生の入口と出口でかくも苛酷な環境を強いられる社会に成り下がった。


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有馬病院長インタビュー

 福祉ネット広報紙の第7号の編集に着手した。前号に引き続いて今号でも福祉ネット・オブザーバーの有馬病院の病院長インタビューを掲載することになった。
 その取材のため事前にアポを入れて有馬病院を訪問した。明るい開放的な病院受付で来意を告げると担当者に会議室に案内された。穏やかな雰囲気の病院長とのインタビューが始まった。事前に届けておいたインタビューポイントに沿って取材を進める。
 1時間ほどの取材を終えてこの病院の過去と現在の沿革を想った。60年前に精神疾患専門病院としてこの地に開設された病院である。地区社協の20年誌に掲載された写真には、開発が着手されたばかりの住宅街の造成地の手前に有馬病院の白亜の建物が写されている。以来30数年が経過した。既存の精神病院と後からやってきた新興住宅街の住民との間には複雑な関わりが介在しただろうことは想像に難くない。7年前には本館の全面改装とリワーク病棟の新設が完了し外観の印象も一新された。
 インタビューでは病院の地域医療との関わり方をお聞きした。山口健康福祉センターの相談活動での医師派遣、通院患者の訪問看護、地域の研修会での講師派遣や病院での研修受入れなどが紹介された。秋の収穫祭は患者や家族だけでなく地域住民にも開かれたイベントとして催されている。
 何よりもうつ病や認知症といった精神疾患がますます地域住民にも身近で切実な問題になってきた。それだけにこの病院と地域住民との結びつきは年々密になっているようだ。建物や内装の明るくてオープンなイメージをオーバーラップさせながらそんな印象を強く受けた。

 



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漂流キッズ

 今期から福祉ネットの事業目的に「子育て支援」を追加した。福祉ネット総会直後の第1回役員会で初めて「子育て支援」についてフリートーキングを交わした。今まで気に留めていなかった「子育て問題」の深刻さを思い知らされた。
 役員会に初参加のPTA派遣役員から、保護者の共働き世帯やシングルマザーの多さが報告され、放課後の子どもたちの居場所のなさが保護者の深刻な悩み事であることを知った。学童保育(育成センター)は3年生までしかなく4年生以降の公的な受入れ先がない。やむなく様々な塾や習い事に通わせることになる。どこにどんな塾や習い事の場があるのかという情報収集が切実な問題だという。
 ある学習塾の運営責任者である知人からも塾に通う生徒たちの実情を聞かされた。所定の授業とは別に塾の自習室で過ごす子どもたちが多いという。親たちの帰宅時間まで自習したり塾仲間たちと時間を潰すためだ。
 先日の市社協評議員会でも受託している育成センター事業の運営の厳しさが報告された。利用希望者の増加が著しく市は育成センターの増改築でクラス増と定員増をはかろうとしている。ところが受託事業者側では待遇面の低さもあって指導員の確保が追いつかない。慢性的な人不足状態で定員増に応じがたい現状である。
 今後も放課後の子どもたちの居場所問題の深刻化が加速しそうだ。子どもたちが放課後の居場所を求めてさまよっているかのように見える。「漂流老人」のイメージがオーバーラップしてふと『漂流キッズ』という言葉が浮かんだ。子どもたちの環境のこんな苛酷さが心身の成長に影響を及ぼさない筈はない。



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福祉ネット第4回総会&交流会

 福祉ネットの4回目の総会を終えた。設立以来丸3年を経て「住民主体の地域包括ケアシステム」という新たな事業モデルが曲りなりにも定着してきた感がある。
 定刻の1時半に会場のコミュニティセンターには構成組織の執行部メンバーである代議員29名、オブザーバー、アドバイザー12名、ご来賓8名の計49名の方の出席があった。
 主催者代表の開会挨拶は住宅街の自治会長に就任したばかりの若い子育て母さんにお願いした。子育ての苦労や悩みと地域福祉との関わりを織り交ぜた素晴らしいスピーチだった。
 事務局長である私から事業報告、事業計画、会則改訂、役員改選を提案した。事業計画の今回の大きな柱は事業目的に「子育て支援」を追加した点だ。そのため構成組織に新たに地元小学校PTAに参加して頂いた。議案審議では、地区社協に全面的に依存する会計の在り方や事業計画と構成組織の関わり方等について質問があった。今期の役員会で検討する旨の答弁をした。
 予定より早く総会を終え、参加者交流会に移った。10分程度のコーヒーブレイクの後、交流会参加の来賓、オブザーバー、アドバイザーの16名の皆さんに自己紹介を兼ねたコメントを頂いた。それぞれに個性的で意欲的な取組みが紹介され、参加者の各組織についての認識を新たにした。その後、テーブルを自由に移動する形で30分ばかり交流会となった。交流会の締めの挨拶を自治会長を退任したばかりの前議長にお願いした。地域での孤立化防止をテーマにした1年間の福祉ネット議長の経験がにじむ良い挨拶だった。
 予定より早い15時半頃に4回目の総会&交流会を終えた。

 



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地元病院の院長インタビュー

 年二回発行の広報紙「福祉ネット北六甲」の第6号を来年1月下旬に発行予定である。役員会で地元の基幹病院の院長インタビューを掲載することを確認した。その病院の医療法人は福祉ネットのオブザーバーでもある。事前に面識のある理事長に調整してもらい、院長室で取材に応じて頂いた。
 1時間に及ぶインタビューで多くの情報と新たな見方が得られた。何しろ医師でもある病院長という立場の方との突っ込んだ懇談は初めてである。事前にインタビューポイントを整理して、福祉ネット広報紙のバックナンバー、直近の総会議案書、社協分区20年誌等の参考資料も添えてお渡ししておいた。
 50代後半の穏やかで誠実なお人柄のドクターだった。事前資料をよく読んでおられたようで、インタビューポイントに沿って的確に答えて頂いた。
 インタビューを通して最も知りたかったのは、病院としての在宅医療との関わり方だった。北部西宮という比較的限定されたエリアでの病院勤務医や開業医等の人的なつながりは良好とのこと。病院と診療所との機能分担もうまくいっているようだ。ただ病院と在宅医療との連携は必ずしも円滑とはいかない。在宅患者の家族の想いや事情、介護認定上の制約等が絡んだ難しさも生じる。
 福祉ネットについての期待や評価も頂いた。 「福祉ネットという網は、人体に例えると様々な臓器をつなぐ神経や血管ではないか。医療機関や介護施設や民生委員等の様々な社会資源を網で繋いでそれを太くきめ細かくすることで連携をスピーディに緊密する役割だと思う。またご近所さん、ボランティアさん、ちょい呑みオヤジ会員など末梢の人対人を繋ぐ毛細血管でもある。そこから様々な情報を吸い上げ各臓器に伝えている。その意味で人体全体を覆う大血管と毛細血管の機能が福祉ネットではないか」。ドクターならではの視点に共感した。


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地元在宅医さんとの懇談

 福祉ネットのアドバイザーでもある地元在宅医さんと昼食をご一緒しながら1時間半ばかり懇談した。
 9月3日の福祉フォーラムにも参加していただき、講師の川崎医師とも名刺交換とちょっとした交流をして頂いた。懇談の目的はフォーラムの受講者アンケートにもあったこの地域での医療連携である。緊急時の代替機能は神戸市北区の在宅医との連携があるとのこと。また宝塚、三田、神戸市北区の病院との日常的な連携もとれているとのこと。
 他方で福祉ネットの高齢者ケアや在宅ケアに向けた対応は他の地域にない先進的な取組みで在宅医の立場からも評価しているとのこと。そんな状況も含めてこの地域の在宅医療の環境は比較的整っているのではないか。あとはそれらの環境をどのようにネットワーク化できるかということではないかと指摘された。
 次のような話も伺った。「在宅ケアは最終的には家族力にかかっている。介護の始まりから終末期の看取りに至るまで介護者家族がどこまで本人に寄り添えるか。その覚悟が問われる。こんな事例があった。永い介護の果てに終末期を迎えた男性の元を永い間見舞っていなかった遠方の娘がやってきた。元気な父親の姿しか覚えのない娘が変わり果てた父親をみて泣き叫びながら緊急入院を迫った。介護者は自宅で平穏な死を迎える手筈を本人も交えて確認していた。にもかかわらず突然やってきた遠方の娘の感情的な意向に抗しきれなかった。結局男性はその2日後に自宅での死を迎えることなく病院で亡くなった」。家族力の意味について示唆に富んだ話だった。


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在宅医療の開業医連携(福祉フォーラムから)

 第3回福祉フォーラムの講演内容を整理しておきたい。講師は西宮市内で15年に渡って外来診療の傍ら在宅医を続けてこられた55歳の川崎医師である。地域医療にも意欲的でメディカルケアネット西宮の有力メンバーで「みやっこケアノート」の作成者のひとりである。
 多数のパワーポイントシートを駆使したプロジェクターによる講演だった。大阪府貝塚市出身の医師が地縁のない西宮市内で開業し軌道に乗せるため医師会はじめ積極的に地域の勉強会や研究会に参加されたという。訪問診療を手掛ける上で訪問看護ステーション、ケアマネ、ヘルパー、理学療法士等の専門職とも交流を重ねた。このことが川崎医師の今も原点になっているようだ。
 地域包括ケアの本題では、急性期病院やリハビリ回復期病棟からの在宅移行後の対応が地域包括医療の役割となる。医療機関単独の対応では限界がある。訪問看護、訪問介護、薬剤師、訪問リハビリさらに介護保険による生活支援サービス等の多職種による連携が欠かせない。これに対応するため「強化型在宅支援診療所」があり一診療所3名の医師か川崎医院のような9診療所未満の連携体制がとられる。講師からは具体的に川崎医院を含む七つの開業医による連携体制が紹介された。こうした在宅支援診療所による5年余りの連携で「情報共有」(在宅処置や、麻薬の使い方、症状緩和の工夫等)、「医療機器の共有」(ポータブルタイプの超音波検査器等)、「自由時間の確保や緊急時の代行」(遠方への旅行、学会参加などでの留守番や緊急時対応)が可能になったとのこと。
 訪問診療の実情を知るにつけて在宅医の過剰な負担が気になった。今後の在宅医療の需要の急増は訪問診療の基盤を揺るがしかねない。当面の対応は訪問診療に携わる開業医間の連携しかないことが分かった。在宅医は体力的にも苛酷な24時間対応が迫られる。若手の志ある医師の在宅医への参入と既存の強化型在宅支援診療所での連携を期待したい。

 



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第3回福祉フォーラム参加者の全体像

 第3回福祉フォーラムの参加者名簿や受講アンケートを整理して今回の参加者の全体像や意向が掴めた。
 参加者数は88名だった。その内、福祉ネットを構成する組織の役員等の代議員は31名、オブザーバー、アドバイザー等の関係者は10名でいわゆる動員数は計41名である。これに対し一般参加者数は47名で動員数を上回る。過去の総会とセットのフォーラムでの一般参加者数は第1回が40名、第2回が34名だった。単独開催となった今回は過去を上回り地域に開かれたフォーラム開催という狙いは達成できたと言える。
 受講者アンケートは42名の方に回答を頂き、回収率は48%だった。男性21名と女性20名で地域活動での参加状況としては男性の多さが目についた。年代別では60代12名、70代10名、50代8名、80代以上と40代が各4名と続く。30代も1名参加があった。講演内容の評価では「良かった」30名、「普通」11名、「不満」1名である。
 フォーラムの感想、今後取り上げてほしいテーマ、福祉ネットや地区社協への要望意見についても多くのコメントが寄せられた。全くコメントのない回答はわずか4枚で他は何らかのコメントが記載されている。「開業医間の一層の連携を」「初期認知症と診断された時の医療機関以外の出かけ先を」「神戸市北区や三田も含めた医療連携の強化を」「旧地区も巻き込んだ取組みを」「認知症初期集中支援チームの地域での発足を」「在宅医の負担軽減のための環境づくりが在宅ケア推進に欠かせない」等々。今後の福祉ネットや地区社協の取組みに参考にすべきコメントも多かった。



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第3回福祉フォーラム「在宅ケアと地域支援」

 山口ホールで第3回福祉フォーラムを福祉ネットと地区社協共催で開催した。会場いっぱいに並べられたテーブル席は88名もの参加者で埋められた。
 過去2回は福祉ネットの総会とセットで開催した。構成組織からなる代議員やアドバーザー、オブザーバー等の参加がベースになるため参加者数の懸念は少なかった。ところが福祉ネット関係者中心で地域住民の一般参加は少なかった。その時々の福祉課題をテーマに地域での問題意識の共有が趣旨である。福祉ネットの総会の在り方についても折角年一回、関係者の集う場であり、総会後には交流の場が必要ではないかという意見もあった。そこで福祉ネット総会と福祉フォーラムを分離、今回は独立したフォーラムとして開催した。
 そんな背景もあって、果たしてどれほどの参加者があるかが大きな懸念材料だった。事前に電話やメールで参加打診を行いなんとか80名前後の参加が見込めたものの当日の実際の参加は尚不安を残していた。そんな経過での88名の参加者は予想以上の結果と言える。
 今回のテーマは「在宅ケアと地域支援」である。西宮市内の開業医で15年に及ぶ訪問診療の実績のある川崎医師に講師をお願いした。参加者の多くは差し迫った在宅介護という現実を少しでも学んでおきたいという気持があったと思われる。テーマのタイムリーさも参加数の背景にあったようだ。

 



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明日香 亮
プロフィール
山口は豊かな自然と歴史や伝統に育まれた街である。散歩道で目にする四季折々の風景や風物詩を綴ってみたい。
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