阪急沿線文学散歩

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遠藤周作の「秘密の場所」

 遠藤周作「砂の城」で早川泰子は亡くなった母が手紙に書き残した「美しい場所」を探しに行きます。
<駅に戻って逆瀬川駅までの切符を買った。時刻は昼近くだった。逆瀬川は終点の宝塚から二つ手前の駅で、あの母の手紙では彼女に恩智勝之が「秘密の場所」を教えたところなのである。白い川原の両側に大きな邸宅が並んでいた。間もなくゴルフ場を矢印で示した看板が眼についた。「秘密の場所」は母の手紙ではこのゴルフ場にそった山の寺の下にあるはずだった。>
 今回不思議なことに逆瀬川は宝塚の二つ手前の駅と正しい記述に変わっていました。連載中に編集者から訂正されたのでしょうか。



写真は現在の逆瀬川駅と主人公が歩いた道です。甲山が見えていますが、白い川原は草に覆われ、両側の景色もかなり変わりました。
 ゴルフ場や山の寺が出てくれば、もうゴルフ場は宝塚ゴルフ倶楽部、山の寺は法華閣に違いありません。



<甲山と六甲山脈の山々がうしろに拡がっている。なだらかなゴルフ場のあちこちには黄ばんだアカシヤの大木が植えられ、まるでスイスの牧場のようである。二組ほどのグループがゴルフのクラブを振っている。>



 アカシアの木、昔は西宮でも市街地だったか田んぼのそばだったかでよく見かけました。でも今は市内では見たことがありません。今週たまたま札幌に来たのですが、そのアカシアが街路樹として多く使われており、この時期ちょうど白い花を咲かせていました。
<そのゴルフ場の途中に遊岩寺と書いた立札が出ていて泰子はすぐ、(ここだわ)と道を右にとった。道は枯葉の散った山道となり、両側は茶褐色や黄色になった雑木林に変わった。小鳥が時々、するどい声を出して林の中から飛び立った。渓流の小さな音が聞こえた。耳をすますとそれに混じって砂のように乾いた音もする。風がかすかに吹くたびに舞い散る木の葉だった。>



 小説では遊岩寺として登場しますが、法華閣に間違いありません。逆瀬川からゴルフ場を抜けてくると、出たところを右に曲がることになります。ここを少し上がっていくと、先日紹介した黒い建物があります。



 そしてその奥に墓地が少し見えていますが、そこまで行くと、草むらになって何も見えない谷の下から小説にあるように渓流の小さな音が聞こえてきたのです。もうこうなれば覚悟を決めて、草むらに分け入り、引っかき傷をつけながら、急斜面を降りるしかありません。




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阪急沿線の街にゆかりのある小説や随筆、アニメの舞台を訪ね、当時の景色や登場人物に思いを馳せるセンチメンタル散歩です。震災以降、街並みは大きく変わりましたが、歴史ある美しい景観を守る一助になればと思っています。

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