阪急沿線文学散歩

サブURL(このURLからもアクセスできます):http://nishinomiya.areablog.jp/bungakusanpo

「即興詩人」アマルフィ

 イタリアで訪れてみたい町のひとつがアマルフィです。10〜11世紀に海洋都市国家として栄え、世界遺産ともなっているイタリアの最も美しい町。

原文以上といわれ、また須賀豊治郎が激賞した森鴎外の雅文体の「即興詩人」ではどのように表現されているのか、読んでみることにしました。
 それでは森鴎外「即興詩人」夜襲の章からです。
<伊太利に名どころ多しといえども。このアマルフイイの右に出づるものは少なかるべし。われは天下の人のことごとくこれを賞することを得ざるを憾(うら)みとす。この地は広ぼう幾里の間、四時春なる芳園にして、その中央なる石級上にアマルフイイの市(まち)あり。西北の風絶えて至ることなければ、寒さというものを知らず。風は必ず東南より起り、棕櫚橘柚(しゅろオレンジ)の気を帯びて、清波を渉り来るなり。
市(まち)の層畳して高くそびゆる様は、戯園(しばい)の観棚(さじき)の如く、その白壁の人家は皆東国の制に従いて平屋根なり。家あるところをこえて上がり、山腹に迫るものは葡萄丘なり。山上にはちょう壁もてめぐらせたる古城ありて、雲をささうる柱をなし、その傍には一株の「ピニヨロ」樹の碧空を摩して立てるあり。舟の着く処は………>
と長々とアマルフィを描写した文章が続きます。これが雅文体といわれる文章のテンポです。(変換できない漢字はひらがなのまま、かつ現代かなづかいで転記しました)

安野光雅も絵本即興詩人で<その情景を文字で表そうと思っても、「夜襲」のアマルフィの描写を読んだあとは、もう何も言えない。>とシャッポを脱いでいます。

 ところで、アマルフィを舞台にした映画に2009年フジテレビ開局50周年記念作品「アマルフィ女神の報酬」と2004年マイク・バーカー監督、スペイン、イギリス、イタリア、ルクセンブルク、アメリカの合作映画「理想の人」があります。主演はフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」を演じたスカーレット・ヨハンソンです。

 この2作品の舞台は同じアマルフィなのですが、その映像の差には愕然としました。
 映画「理想の人」の舞台、アマルフィの映像の美しさには感激する一方で、フジテレビの映画で過去最高額の製作費が投じられたという「アマルフィ女神の報酬」はテレビ映画の技量を抜け切れない映像で、その実力差は日本の映画の将来さえ危ぶまれるほどでした。市川 崑のような日本人特有の繊細な映像感覚を持った映画監督はもう現れないのでしょうか。
 また「理想の人」の原作はオスカー・ワイルドの代表作ともいわれる戯曲『ウィンダミア卿夫人の扇』で、ストーリー展開ににおいても、オー・ヘンリーの作品を思わせるような結末があり、余韻が残る名作でした。



ウィンダミア卿夫人の扇 オスカー・ワイルド

goodポイント: 0ポイント

このポストをお気に入りに追加 0人がお気に入り登録中
このポストのURL http://nishinomiya.areablog.jp/blog/1000061501/p10779936c.html
森鴎外 | コメント( 0 ) | トラックバック( 0)
名前   削除用パス  
コメント
※入力可能文字数は1000文字です

このブログトップページへ
seitaroイメージ
阪急沿線の街にゆかりのある小説や随筆、アニメの舞台を訪ね、当時の景色や登場人物に思いを馳せるセンチメンタル散歩です。震災以降、街並みは大きく変わりましたが、歴史ある美しい景観を守る一助になればと思っています。

カテゴリー一覧

QRコード [使い方]

このブログに携帯でアクセス!

>>URLをメールで送信<<