阪急沿線文学散歩

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川端康成も「少女の友」に連載していました。

 川端康成は「少女の友」と深く関わっていたようで、読者投稿文の選者をしたり、少女向け小説を連載していました。川端康成全集〈第20巻〉には『乙女の港』、『花日記』、『美しい旅』、未完の『続美しい旅』という少女小説が収録されています。

 須賀敦子「サフランの歌のころ」では次のように川端康成が登場します。
<「少女の友」には、淳一の挿絵で、「美しい旅」という小説が連載されていた。作者の名を見て、この川端康成という人は、おとなの本も書いているのよ、と母が教えてくれた。その小説のすじはほとんど思い出せないのだけれど、盲目の小さな女の子がでてきた。その子が、だれかに連れられて汽車で旅行する場面があった。>
川端康成全集には、そのお話の一場面が書かれていました。「美しい旅」からです。
<明子に頼りきって、じっと真っ直ぐ向いたまま、遠い声に耳をすませているような花子は,天から神の子が降りてきたかと見えた。なにか神聖な香気を放っているようで−
東京の美しい女の子達も、田舎から出てきた花子にくらべると、ちりによごれていると思えた。
「ほんとうに、なんてきれいなお子でしょう。」と、咲子のお母様は不思議そうに見とれて、.........「こんない神聖な感じのするお子は、見たことありませんわ。」>
須賀さんは「美しい旅」について、次のような感想を述べられています。
 <花子という名もすてきだったが、なによりも、盲目なのに、吸い込まれるそうに美しい目というのは、いったいどんなことだろう、と私は考えた。汽車に乗っている花子の挿絵があった。淳一の描く濡れたような黒い大きな目が、川端康成の文章にぴったりだった。>


須賀さんも子供の頃は、やはり少女らしいご趣味でした。

 

 後に須賀さんは川端康成の「山の音」をイタリア語に翻訳します。

その頃のお話が書評集「本に読まれて」で「小説のはじまるころ」と題して述べられていました。


<一九六八年の冬の日に、私たちはローマ郊外の森にかこまれたレストランで、ノーベル賞の授賞式をおえてイタリアに寄られた川端夫妻と夕食のテーブルを囲んでいた。当時、私の住んでいたミラノの出版社から依頼されて「山の音」をイタリア語に翻訳させていただけないかとお願いにいったのを、大使館の方が夕食にさそってくださったのだった。>
食事のあとの会話からです。
<すると川端さんは、あの大きな目で一瞬、私をにらむように見つめたかと思うと。ふいと視線をそらせ、まるで周囲の森に向っていいきかせるように、こういわれた。それが小説なんだ。そこから小説がはじまるんです。>


この言葉の中に川端文学の秘密が隠されていたことに須賀さんが気づくのは、一年以上たってからでした。



少女の友

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川端康成 | コメント( 4 ) | トラックバック( 0)

川端さんのお言葉の前にどんなやり取りがあったのでしょうか、気になります。

[ ふく ] 2012/11/18 7:46:04 [ 削除 ] [ 通報 ]

大正生まれで今は認知症になった叔母に
とてもかわいがってもらいました。叔母の名前は「花子」と
言いましたが可愛らしいお顔をしていました。しかしいつも
自分の名前が嫌いだと話していました。叔母にこのお話を
聞かせてあげたいとふと思いました(*^_^*)

[ ショコママ ] 2012/11/18 8:35:30 [ 削除 ] [ 通報 ]

既にご存知だとは思いますが、須賀敦子さんの肉声ではありませんがDVDがあります。 ↓
http://www.youtube.com/watch?v=F7sPsIKtCnI
こちらも須賀敦子さんのお見舞いにいらした古本屋さんの話などが出てきます。↓
http://d.hatena.ne.jp/kuriyamakouji/20100511

[ ロックウェル ] 2012/11/20 17:54:55 [ 削除 ] [ 通報 ]

ロックウェルさま ありがとうございます。このDVDはいずれ購入するつもりなのですが、まだです。BS朝日の番組を見たのですが、落ちついた美しい風景と語りで、これを見て須賀ファンになり、更に作品を読んで、夙川に住まれていたことがわかり大ファンになってしまいました。いつかイタリアも旅したいと思っております。
もうひとつ紹介いただいたブログは全然知りませんでした。癌で入院されていた時のことが書かれていましたが、もう少し読んでみます。

[ seitaro ] 2012/11/20 18:59:02 [ 削除 ] [ 通報 ]

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阪急沿線の街にゆかりのある小説や随筆、アニメの舞台を訪ね、当時の景色や登場人物に思いを馳せるセンチメンタル散歩です。震災以降、街並みは大きく変わりましたが、歴史ある美しい景観を守る一助になればと思っています。

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