阪急沿線文学散歩

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夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)それから

 「ビブリア古書堂の事件手帖」第一話で、主人公五浦大輔の母は祖母の遺品の『漱石全集』の一冊に、「夏目漱石 田中嘉雄様へ」という漱石のサインがあるのを見つけます。大輔はサインが本物であるかを調べるため、ビブリア古書堂を訪れますが、あいにく店主は入院しており、その病院まで行って大輔はビブリア古書堂の女店主篠川栞子に会います。
デパートの紙袋に入れて持参した「漱石全集」を鑑定してもらうと、
<「あっ、岩波書店の新書版ですね」手渡された袋を覗き込むと、彼女は眼を輝かせた」手渡された袋を覗き込むと、彼女は目を輝かせた。………最初の卷から一冊ずつ筺を外してページをめくっていく。背表紙に印刷されている作品名は「我輩は猫である」とか「坊ちゃん」とか、俺でも知っているものばかりだ。………
不意に口笛が止まる。彼女の膝に載っているのは例の「第八巻それから」だった。>
 小説に出てくる「漱石全集」は新書版の初版ですが、初版でなくとも図書館にあるのではないかと探してみることにしました。
 しかし図書館で見つけた岩波書店の「漱石全集」は新書版ではなく、それからは「第六巻 それから・門」として収められていました。

 この本は須賀敦子さんが「遠い朝の本たち」で述べられていた、父上の書棚にあった漱石全集で、子供の頃表題を見て「それから門」という一つの小説だとずっと勘違いしていた全集だと思われていた本です。


 それでは話題の第六巻はどんな本だったのでしょう。
<「あの、『漱石全集』って何回もでているんですか」
「岩波書店だけではなく、色々出版社から全集と名の付くものが世に出ています。最後まで刊行されずに中断されたものを含めれば三十種類を越えていますね」>
そして新書版が初出版された年代は、
<「やっぱり本物のサインと違うんですか?」「ええ。そもそも年代が違います。夏目漱石の没年は大正五年、この新書版の全集の刊行が始まったのは昭和三十一年…四十年も後です」>と説明され、昭和31年でした。
 この昭和31年の全集がオークションに出品されていました。


 筺に書かれた「漱石全集第八巻それから」もはっきり読めます。
<「岩波書店は日本で最初に『漱石全集』を刊行した出版社です。創業者の岩波茂雄は漱石にゆかりの深い人物で、漱石の弟子たちとも交流がありました。彼らは協力しあって最初の全集を作り、その後も数年おきに改訂して出版してきたんです。この廉価版でも手を抜いていません。漱石の日記が初めて全部公開されたのはこの全集ですし、各卷の解説は漱石の弟子である小宮豊隆が、この全集のために書き下ろしたものですね。」>


よどみなく女店主篠川栞子さんが説明してくれます。
 さて漱石の「それから」のあら筋は、主人公長井代助が、かつての恋人の三千代を義侠心から友人の平岡に譲ることから始まります。その後平岡夫妻は大阪で失敗し、3年を経て帰京、しかも夫婦の間には亀裂さえ生じています。あらためて三千代への愛を自覚した代助は、三千代に胸の思いを告白、三千代はそれを受け入れ、大輔はすべての財産を投げ捨て、新しい人生のスタートを切るお話しです。


 これが「ビブリア古書堂の事件手帖」第一巻の伏線となって物語が展開します。



ビブリア古書堂の事件手帖

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阪急沿線の街にゆかりのある小説や随筆、アニメの舞台を訪ね、当時の景色や登場人物に思いを馳せるセンチメンタル散歩です。震災以降、街並みは大きく変わりましたが、歴史ある美しい景観を守る一助になればと思っています。

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