阪急沿線文学散歩

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西東三鬼「神戸・続神戸・俳愚伝」の舞台トーア・アパートメント・ホテル

 堀辰雄の「旅の絵」にでてきたのはトアロードと東亜ホテルですが、同じトアロードに面したホテルを舞台にした作品がありました。

昭和17年に東京からトアロードに面したホテルに移り住み、そこでの経験を描いたのが西東三鬼「神戸」でした。俳人で歯科医だった西東三鬼、この頃の作家は皆女性関係が複雑です。冒頭は次のように始まります。
<昭和十七年の冬、私は単身、東京の何もかもから脱走した。そしてある日の夕方、神戸の坂道を下りていた。………
神戸の中央、山から海へ一直線に下りるトーアロード(その頃の外国語排斥から東亜道路と呼ばれていた。)の中途に、芝居の建物のように朱色に塗られたそのホテルがあった。私はその後、空襲が始まるまで、そのホテルの長期滞在客であったが、同居の人々も、根が生えたようにそのホテルに居座っていた。彼、あるいは彼女等の国籍は、日本が十二人、白系ロシア女一人、トルコタタール夫婦一組、エジプト男一人、台湾男一人、朝鮮女一人であった。>
 このホテルの正式名称はトーア・アパートメント・ホテル、堀辰雄が泊まったホテルエソワイアンもそうでしたが、当時の神戸の雰囲気そのもの、外国人客の多い国際ホテルだったようです。

 西東三鬼は神戸では歯科医をやめ、貿易業を営んでいたようです。あとがきに、三谷明が「ボヘミアン三鬼」と題して、そのホテルの三鬼の部屋を訪れた時の様子を述べていました。
<私にとって、神戸ははじめての土地だったが、三鬼はハガキに略図を書いて送ってくれていた。それでその略図を手に持ちながら、三宮駅から生田神社の前を通り、まっすぐ行くとトーアロードに突き当たる。それからちょっと右へ行くと、その朱色の奇妙な建物はすぐ目に入った。三鬼は、薄暗い、そしてあまり広くないロビーに待っていてくれて、「よう来たな」と言うと、そのまま二階へ連れて行った。二階のトーアロードに面した二部屋を借りているとかで、私の案内された部屋には洋服ダンスと鏡台が壁際に並んで置かれていて、一緒に住んでいる女性がいるなということが、それを見ただけですぐわかった。その女性、つまり「神戸」第二話の波子なる女性がコーヒーを淹れて現れたのは、それから間もなくのことだった。>
西東三鬼も「神戸」第三話で、その二階の窓からの風景について述べています。


<そのホテルの私の部屋は、トーアロードに面した二階の二部屋であった。トーアロードは、神戸の中央を、山から海へ横断するなだらかな坂道である。………
私の仕事といえば、朱色に塗られたホテルの窓に頬杖をついて、ぼんやり往来を見下ろすことであった。そういえば私の何かがつまっているような耳に、時々、遠くの方から歓声のごときものが聞こえた。それは坂の下の方で、トーアロードを横切る汽車に、ハチ切れる程に詰め込まれた兵隊の揚げる声であった。>
昭和17年のことですから、既に太平洋戦争が始まり、出征の場面だったのでしょう。
 北野町の萌黄の館(小林家住宅・旧シャープ邸)の二階からの景色を昨年撮影していました。

 

昔の景色はもう少し風情があったのでしょう。

 

 三鬼は空襲の危険をさけるために翌年には、ホテルを出て、山本通り四丁目の古い洋館に移りました。その洋館は三鬼館と名付けられたそうです。

 さて三鬼の滞在したトアロードの奇妙なホテルは、三鬼が去った降雨のように焼夷弾を浴びて炎上し、灰になったということです。

 

(トアロードの突き当たりにあった東亜ホテルは空襲を免れたのですが、戦後失火により焼失してしまいました。)


 




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西東三鬼 | コメント( 5 ) | トラックバック( 0)

西東の滞在していたのはトアロード沿いのようですが、東亜ホテルではなく、もっと下の方の規模の小さい別のホテルだと思って読んでいました。

[ ふく ] 2013/09/23 1:38:25 [ 削除 ] [ 通報 ]

大失敗です。その通りでした。「戦前の神戸ではナンバー3の高級ホテルだったとのこと」という説明を読み、東亜ホテルと思い込んでしまったのが大間違い。よく読めば空襲で焼けたことや、トアロードの途中にあったとのこと。プロなら大変なことでした。お詫びして本文も修正いたします。

[ seitaro ] 2013/09/23 6:11:43 [ 削除 ] [ 通報 ]

深夜に目が覚めて気づいきました。最近twitterにリンクされて、お読みになる方がひろがっていますので、気になりかきこみました。

[ ふく ] 2013/09/23 7:57:37 [ 削除 ] [ 通報 ]

このような内容で炎上はないと思いますが、twitterは炎上させることによって、収入が得られるようなこともあるようですので、ちょっと恐いです。mixiやfacebookはクローズしてしまえばほぼ知り合いに限定してしか情報閲覧できません。西宮ブログも検索語に気をつかえば、ヒットしないようにできます。twitterの場合はそうはいきません。地域にかかわるネタで個人の情報もふんだんに含まれておりますので、読むだけなら殆ど気付かれませんが、twitterとリンクさせた発信には慎重になってしまいます。

[ ふく ] 2013/09/23 9:50:02 [ 削除 ] [ 通報 ]

上の書き込みが不適切で書き込めないと何度も表示がでました。どの言葉かわからず困りましたが、どうやら「個人 情報」のようです。「風 俗」もそうでしたが、二つ見つけました。

[ ふく ] 2013/09/23 9:51:17 [ 削除 ] [ 通報 ]

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阪急沿線の街にゆかりのある小説や随筆、アニメの舞台を訪ね、当時の景色や登場人物に思いを馳せるセンチメンタル散歩です。震災以降、街並みは大きく変わりましたが、歴史ある美しい景観を守る一助になればと思っています。

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