阪急沿線文学散歩

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ガンブリア宮殿 「世界を席巻!常識破りの家電メーカー・ダイソン」

5月15日の日経スペシャル ガンブリア宮殿を見て、久々に物づくりが脚光をあびる番組で、元気が出ました。


 なによりダイソン氏の「ぼくは賢い人間ではなく、根気強い人間だ」という言葉が凡人を奮い立たせてくれます。


 実際、彼は美術専門学校を経て英王立芸術大学院卒業という経歴で、デザイナーではありましたが決して工学を学んだ人ではありません。しかし「紙パック不要の掃除機」を思いつき、資金難や盗作など様々な苦難を乗り越え、5000回以上の失敗にもめげず、12年を費やして製品化したのです。
 彼の著書を探すと2004年には日経BP社から『逆風野郎!ダイソン成功物語』が出版されていました。


内容はダイソンの苦難と失敗の連続を綴ったものですが、巨大組織という魔物、あらゆる既成概念にひとりで挑んだ男の壮絶な半生がユーモアたっぷりに描かれています。
 この第12章 「Gフォース大好き!」 −助け船は日本から
ではダイソンの興味深い日本の印象が述べられえており、まだこれほど認識のギャップがあるのかと驚かされます。例えば
<表面上はこの優秀で尊敬すべき人々と日本流のビジネスをしているように見えるかもしれないけれど、実際はまっすぐな黒髪と欧米人への嫌悪感を持つ小柄なアメリカ人を相手にしているんだ。>
と日本人の私には奇異に感じる描写ですが、ダイソンはそのように感じているのです。
一方、過大な評価かもしれませんが、
<しかし、日本人は常に学んできた。少しずつ改良しながらね。いまや彼らは最高の技術、最高のデザインを持ち、世界で最も優れ、最も信頼される車を作っている。順応性を重んじた昔、日本人デザイナーはいなかったが、個人主義に出会った今は、美しいモノを創造し始めている。そして世界は驚いた。その成功はすべて、イギリス人が取り付かれている飛躍的発展のまさに対極にある、漸進的発展という考えから生まれているからだ。>
という認識も持っているのです。
本田宗一郎を尊敬すると言っていたダイソン、彼に匹敵する物づくりのできる日本人は個人主義が定着した新世代から出現するのでしょうか。

今野浩『スプートニクの落とし子たち』のように理工系ブームに踊らされた世代は消え行くのみです。




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エンジニアの老後を予感させる今野浩著『工学部ヒラノ名誉教授の告白』

 村上春樹は旧ソ連が打ち上げた人工衛星スプートニクについて文学的感性で捉え、それを背景に『スプートニクの恋人』という長編小説を書いており、さすがノーベル文学賞の呼び声高い作家の作品です。

 

 一方私のような凡人にとって分かりやすかったのはノンフィクションですが東工大名誉教授の今野浩著『スプートニクの落とし子たち』。

スプートニクの打ち上げが当時の日本の若者に与えた影響や理工系の悲哀が描かれ、思わず頷きながら読みました。
<しかしこの人の最大の不幸は、第一次理工系ブームの中で、高校時代を過ごしたことではないだろうか。スプートニクの打ち上げによって、彼の人生は本来の軌道から外れたのだ。軌道を外れたのはこの人だけではない。本来別の分野で進むべき若者が、スプートニクによって理工系大学に吸い寄せられたのである。>

 

 最近STAP細胞開発でリケジョ小保方さんが一躍脚光を浴びたものの、随分昔から理工系離れは進んでおり、当然と思っていました。先日、今野浩氏の『工学部ヒラノ名誉教授の告白』を読んで、またまたエンジニアの哀れな末路に思いが至りました。


 目次をご覧になればわかるように、理工ブームに乗り、エンジニアに向かない少年が工学部に紛れ込み、「工学部の語り部」となるのです。
<工学部は、いわば日本社会における(かつての)チベットのような存在である。なぜそうなのかと言えば、エンジニアは自分のことを語ろうとしないし、一般の人は、エンジニアに関心がないからである。エンジニアは黙々と働き、世界中から蜜を集めて来た。文系人は、エンジニアが運んだ蜜を腹いっぱい食べたくせに、エンジニアに感謝してはくれない。彼らは“エンジニアは働くことしか能が無い働き蜂”集団だと思っているのである。>という状況を打破するためヒラノ名誉教授は「工学部の語り部」となる決意をされます。
文系と比較して悲哀をかこつ話題は、働き蜂でカルチャーレスの理工系には共感するものばかり。
<あちこちに繰り返し書いたことだが“エンジニアは専門書と趣味以外の本は読まない、買わない、ただで貰えば稀に読むことがある”人種である。>とまで。

 

 その後、ヒラノ名誉教授の奥さんの介護と死、御自分の病気、名誉教授の独居生活へと単身になってからの生活が述べられており、解決策は見出せないのですが、私の暗澹たる近未来を考えさせてくれるには充分な良書でした。

目次


定年退職
エンジニアに向かない少年
工学部に紛れ込んだ青年
研究者への道
研究者の寿命
「工学部の語り部」の誕生
収容所生活
大震災と妻の死
『終わりのない物語』
ノンフィクションからセミ・フィクションに
名誉教授の独居生活
語り部の評判
大学の危機と語り部の提言
工学部の語り部の役割


村上春樹のスプートニクでとんでもないところに飛んでしまいましたが、次は村上作品に戻りましょう。

 

 

 


 



リケジョ
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今野浩 | コメント( 1 ) | トラックバック( 0)

>エンジニアに向かない少年
どんなことが書いてあるのか興味津々

[ 笹舟倶楽部 ] 2014/02/24 8:50:25 [ 削除 ] [ 通報 ]

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阪急沿線の街にゆかりのある小説や随筆、アニメの舞台を訪ね、当時の景色や登場人物に思いを馳せるセンチメンタル散歩です。震災以降、街並みは大きく変わりましたが、歴史ある美しい景観を守る一助になればと思っています。

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