阪急沿線文学散歩

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優雅な花見を小説に描いた谷崎潤一郎

 花見を題材にした小説はいくつかありますが、その優美さや機微を見事に描ききっているのは、何といっても谷崎潤一郎『細雪』でしょう。

<毎年春が来ると、夫や娘や妹たちを誘って京都へ花を見に行くことを、ここ数年来欠かしたことがなかったので、いつからともなくそれが一つの行事のようになっていた。此の行事には、貞之助と悦子とは仕事や学校の方の都合で欠席したことがあるけれども、幸子、雪子、妙子の三姉妹の顔が揃わなかったことは一度もなく、幸子としては、散る花を惜しむとともに、妹たちの娘時代を惜しむ心も加わっていたので、来る年ごとに、口にこそ出さね、少なくとも雪子と一緒に花を見るのは、今年が最後ではあるまいかと思い思いした。>
 蒔岡家のお話ですが、実際に谷崎潤一郎が春になると京都に花見に訪れた様子が、そのまま小説になっています。


<その心持は雪子も同様に感じているらしくて、大方の花に対しては幸子ほどに関心を、持たない二人だけれども、いつも内々此の行事を楽しみにし、もう早くから、−あのお水取りの済む頃から、花の咲くのを待ち設け、その時に着て行く羽織や帯や長襦袢の末にまで、それとなく心づもりをしている様子が余所目にも看て取れるのであった。>
 描かれたのは、一泊二日の祇園の夜桜、嵐山の桜、平安神宮の桜を巡る花見旅行でした。

ところで先だってBSプレミアムで放映された『平成細雪』は撮影シーズンが秋だっため、紅葉の美しい映像を見せていただきましたが、春の桜の映像を見ることができませんでした。

 そこでロケ地として登場した日本さくら名所100選にも選ばれている夙川の翠橋付近の桜はどうなっているか昨日訪ねてみました。

高岡早紀演じる幸子が翠橋の上から、妙子と啓坊が歩いて来るのをみつけるシーンです。

昨日翠橋から見た夙川です。見事に桜が咲いていました。見比べると川べりの歩道に降りる階段に掲示板がありますが、撮影の時は取り払っていたようです。

高岡早紀さんが歩いていた翠橋です。


阪神間モダニズムの時代に架け替えられた夙川の橋はそれぞれ趣があり、『平成細雪』でも第一話と第四話に登場します。

川べりの歩道からのシーンが最も趣があります。
昨日は午前中にゆっくり夙川べりの花見をさせていただきました。




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蒔岡家三人姉妹が歩く芦屋水道路は『平成細雪』では宇治の興聖寺参道

 谷崎潤一郎『細雪』では、幸子、幸子、妙子の蒔岡家三姉妹が艶やかな着物姿で阪急芦屋川駅北の水道路(現在の山手サンモール商店街)を歩く様子が次のように描かれています。

<幸子の家から蘆屋川の停留所までは七八丁と云うところなので、今日のように急ぐ時は自動車を走らせることもあり、又散歩がてらぶらぶら歩いて行くこともあった。そして、この三人の姉妹が、たまたま天気の好い日などに、土地の人が水道路と呼んでいる、阪急の線路に並行した山側の路を、余所行きの衣裳を着飾って連れ立って歩いて行く姿は、さすがに人の目を惹かずにはいなかったので、あのあたりの町家の人々は、皆よくこの三人の顔を見覚えていて噂し合ったものであったが、それでも三人のほんとうの歳を知っている者は少かったであろう。>

 さてこの場面『平成細雪』では、芦屋の分家から雪子の見合いに長女鶴子が加わった四姉妹が雪子の見合いが行われる神戸に向かうシーンとして登場します。

まず阪急芦屋川駅の西にあることになっている蒔岡家の分家は、宝塚市雲雀丘花屋敷にある国登録有形文化財の洋館・正司泰一郎邸。

そこに本家の鶴子が分家を訪れ、四姉妹そろって見合い会場の神戸のホテルに向かいます。

雪子の見合いの場面は神戸ポートピアホテルで撮影されていますが、そのロビーの撮影には、大阪船場の綿業会館が使われています。

 そして、見合い会場に行くために四姉妹が紅葉のきれいな道をそぞろ歩くシーンは、どう考えても芦屋でなければならないのですが、宇治市にある興聖寺の本堂に通じる参道が使われていました。

原作では芦屋の水道路なのですが、土地勘のある人には不自然に感じます。

 ところで宇治の興聖寺は、私の好きなドラマで最近も再放送されていた『京都人の密かな愉しみ』、その中でも面白かった「わたしは京都が嫌い編」にも登場していたお寺。

京都と京都人を嫌う外国人言語学者エミリー(シャーロット・K・フォックス)の京都の挨拶の誇張した解説は傑作でした。

そして「久楽屋春信」の女将沢藤鶴(銀粉蝶)が夫が祇園の芸妓との間に儲けていた隠し子清哲に会いに訪れたお寺が聖興寺でした。

龍仁老師を演ずる伊武雅刀の名演技も光っていました。



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『平成細雪』は市川崑監督作品へのオマージュ

 谷崎潤一郎『細雪』では、京都での花見が最も大切な家族の行事として描かれています。
<毎年春が来ると、夫や娘や妹たちを誘って京都へ花を見に行くことを、ここ数年来欠かしたことがなかったので、いつからともなくそれが一つの行事のようになっていた。>
 小説で花見に行くメンバーは貞之助、幸子、雪子、妙子、悦子であり、長姉の鶴子は参加していません。
<明くる日の朝は、先ず広沢の池のほとりへ行って、水に枝をさしかけた一本の桜の樹の下に、幸子、悦子、雪子、妙子、と云う順に列ならんだ姿を、遍照寺山を背景に入れて貞之助がライカに収めた。>
『細雪』は谷崎潤一郎自身の生活をモデルとしており、谷崎が写した小説そのものの花見の写真が残されています。

左から重子(雪子)、信子(妙子)、恵美子(悦子)、松子(幸子)。

<あの、神門を這入って大極殿を正面に見、西の廻廊から神苑に第一歩を蹈み入れた所にある数株の紅枝垂れ、―――海外にまでその美を謳われていると云う名木の桜が、今年はどんな風であろうか、もうおそくはないであろうかと気を揉もみながら、毎年廻廊の門をくぐる迄はあやしく胸をときめかすのであるが、今年も同じような思いで門をくぐった彼女達は、忽まち夕空にひろがっている紅の雲を仰ぎ見ると、皆が一様に、「あー」と、感歎の声を放った。この一瞬こそ、二日間の行事の頂点であり、この一瞬の喜びこそ、去年の春が暮れて以来一年に亘わたって待ちつづけていたものなのである。>
と谷崎は桜の美しさを見事に描写しています。

美的センスを誇る市川崑監督は1983年公開の映画『細雪』で京都の花見の様子を、長女鶴子を加えた四姉妹の見事な映像に仕上げました。

一方、『平成細雪』で花見のシーンに対応した映像は紅葉の美しい宇治の興聖寺参道でロケされたシーン。撮影時期が秋であったことが影響したのでしょうが、春の桜に対抗する秋の日本の美を代表する紅葉の下の四姉妹が映像化されていました。

更に和服姿の美しい四姉妹に対抗して、最終回の第四話では左京区にある隋心院で、「平成」を意識した洋服姿でお茶を飲む四姉妹。


右京区二尊院の参道で撮影された紅葉のラストシーンも見事でした。

 映画『細雪』(市川崑監督)以来35年ぶりの映像化となった『平成細雪』は市川崑監督へのオマージュと言ってもいい作品でした。




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『平成細雪』妙子のデザイン工房ロケ地となった夙川のカフェ「茶家」

 『平成細雪』で妙子のデザイン工房のロケ地となったのは夙川の越木岩橋のたもとにあるカフェ「茶家」。

外観だけでなく、部屋の中も撮影されたようなので訪ねてみました。

女性オーナーが日本茶の美味しさを知ってもらいたい、とオープンしたカフェで、各地から厳選した茶葉を急須で三煎までいただくことができます。

いただいたのは丹波大納言小豆のたい焼きと静岡茶

ご自慢のたい焼きとあって、香ばしくほどよい甘みでした。

店内は、木のフロアと家具に囲まれた落ち着いた雰囲気になっています。

お茶柄の手ぬぐいや風呂敷も置かれていました。
 
 お茶を飲みながらロケの時のことを女性オーナーに色々お聞きしました。
 夏にぶらりと入ってきたお客から撮影に貸してもらえるかと尋ねられたことがきっかけとなり、10月の土、日2日間で準備し撮影を行ったそうです。

ストーリー展開から、水害で流されそうなくらい川の傍にある民家を探していたそうですが、芦屋川沿いの家は川べりから離れており見つからず、夙川をずっと歩いて探し当てたのが茶家さんだったそうです。

正面の橋が越木岩橋。茶家さんはその左手。水かさをCGで上げてやれば、流されそうな民家がでてきますが、芦屋川の川岸には、そのような条件に合った家はなさそうです。

店内のシーン、見比べると撮影に持ってきた家具と、もともとあった棚などよくわかります。

木の机や丸椅子は一部店内の物を使われたようです。

ところで、撮影に使われた小道具で店の前にある木の柵と鉢は残していってくれたそうです。

確かにFace Bookに載せられているお店の写真には柵がありません。


 初めて訪ねた客にもかかわらず、撮影の時の楽しい経験や女優さんとお話されたことなど色々聞かせていただき、店内の写真も気兼ねなく撮らせていただきました。

興味のある方は、ぜひ一度お訪ねください。




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『平成細雪』暴風雨シーンは平成29年の台風21号実写でした

 原作の住吉川・芦屋川の阪神大水害シーンは『平成細雪』では夙川に場所を変えて登場します。

四女妙子のデザイン工房は夙川の越木岩橋のたもとにあるカフェ「茶家」さんでロケ。


夙川の上流、航空写真の黄色の丸印の位置。


 夙川の水位が上がり、デザイン工房が流されそうになり、妙子が暴風雨の中を芦屋の分家に帰る様子が描かれています。

これが台風の実写ではないかと思いだしたのは、「茶家」さんの外装が、上の映像のようにアトリエ風にされていない元のままの姿が映っていたことがきっかけでした。

さすがに、夙川の水位はCGですが、雨や風の様子はCGとは思えません。

北夙川橋のシーン。

大井出橋付近のシーン。

 ロケがあった「茶家」さんに伺って、ロケのお話をお聞きすると、やはりこの暴風雨のシーンは実写だったとのこと。
10月の「茶家」さんでのロケの約一週間前、台風接近で近くでロケをすると連絡があったそうです。CGはやはり実写には及ばないとのこと。

ただ妙子がアトリエ工房の中から、外の様子を確かめる場面は、撮影日が異なり放水車を呼んで雨を降らせたそうです。

 超大型で非常に強い台風台風21号が夙川に来たのは平成29年10月22日のことでした。神戸の瞬間風速が45・9メートルを記録し神戸の観測では、「ジェーン台風」に次ぐ歴代3位の強風で、「第2室戸台風」も上回ったそうです。

「茶屋」さんでお聞きしたロケの時のお話を次回にも続けます。

総合テレビで「平成細雪」の再放送が始まります。
●第1話 2月20日(火)午前0時15分〜 ※19(月)深夜
●第2話 2月20日(火)午前1時09分〜 ※19(月)深夜
●第3話 2月21日(水)午前0時15分〜 ※20(火)深夜
●最終話 2月21日(水)午前1時09分〜 ※20(火)深夜



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『平成細雪』で登場する美しい神戸の街

 今回は『平成細雪』で登場した神戸の観光スポットを紹介しましょう。
 谷崎潤一郎の原作『細雪』で雪子の最初の見合いの場所は、当時中央区京町にあったオリエンタルホテルでした。


<それも、井谷が双方をただ何となく招待すると云うかねての約束に従って、努めて見合いのような感じを起こさせないようにと云う条件付で、当日時間は午後六時、場所はオリエンタルホテル、出席者は、主人側は井谷と井谷の二番目の弟の、大阪の鉄屋国分商店に勤めている村上房次郎夫妻、此の房次郎が先方の瀬越なる人物の旧友であるところから今度の話が持ち上がった訳なので、これは是非共当夜の会合に欠けてはならない顔であった。>


この見合いの場面は1959年版映画『細雪』では六甲山ホテルが使われていました。

さて、『平成細雪』での瀬越との見合い場所は、ポートピアホテル最上階のフレンチレストラン トランテアンのようです。
その他にもいくつか神戸のシーンが登場します。

雪子と幸子と見合い相手の瀬越が食事をする場面は、神戸の街を見晴らせるビーナス・ブリッジを上がった諏訪山公園展望台にあるイタリアンレストラン「ジャンカルド」のようです。

神戸の絶景夜景も。

妙子と板倉がショーウインドウに置かれた二眼レフカメラを見る場面はハーバーランドのモザイクかと思ってしまいましたが、神戸北野町と紹介されていました。

四女妙子と奥畑啓三のスポーツカーでのデートスポットはライトアップされた神戸大橋下。

 ところで、1959年版の『細雪』で妙子と啓三がスポーツカーで走るのはは阪急甲陽線に沿った道路。後ろに禿げた甲山が映っています。

上は59年前の甲陽園道踏切。下は平成の甲陽園道踏切と阪急電車。

田圃は埋め立てられ、ここからは甲山も見えなくなりました。


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『平成細雪』では阪神大水害の場面は夙川に舞台を変えて登場

 谷崎潤一郎『細雪』の阪神大水害の描写は秀逸ですが、原作では住吉川、芦屋川の氾濫の様子が述べられており、四女妙子が板倉カメラマに救出されるのは玉置女史が経営する洋裁学院(モデルは田中千代ファッションカレッジの前身で神戸市東灘区西岡本にあった田中千代洋裁研究所)でした。

上の写真は1959年版映画『細雪』で玉置洋裁学院が住吉川の濁流に呑み込まれそうになる場面です。

 『平成細雪』で原作の阪神大水害に代わるのは、台風が近づき大雨になっているのに四女妙子が夙川のアトリエからなかなか帰らず、探しに出かけるという場面です。


妙子のアトリエが撮影されたのが、越木岩橋のたもとの日本茶専門店「茶家」さんです。

そして夙川が溢れんばかりのシーン。
CGですが、元は越木岩橋から北に見た夙川です。

建物や街灯を見比べてもらえばわかりますが、いまだかってCGのところまで水嵩があがったことはないでしょう。

そしてこの場面は、茶家さんの前の夙川沿いの道を少し南に下ったところ。左に見えているのは北夙川橋です。

現在のこの場所の写真を撮ると、木の葉がすっかり落ちていますが、ガードレールや電柱の支柱など見比べると間違いないことがわかります。

夙川公園の標識も登場します。

標識は同じものが夙川公園沿いに数か所立っていますが、どうも大井出橋に立っている標識を、別の角度から撮影したようです。

昭和49年まであった夙川市場を模した夙川駅前商店街も登場しますが、平成には無くなっていました。

最後に妙子は夙川ボウルの前の公衆電話ボックスに倒れているところを、板倉に救出されます。この撮影場所だけはわかりませんでした。

ところで雨風のシーン、CGだとは思うのですが、ひょっとして昨年の10月の台風21号の時に撮影したのでしょうか。

そう思ったのは上の映像、妙子のアトリエとして撮影した場面(上から2枚目の写真)と少し外観が異なり、普段の風景です。
台風接近に伴い急遽撮影に来たからではないでしょうか。



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おじゃまいたします。
立春とは名ばかりの、厳寒の日々がつづいてますね。

すでにご存知かと思いますが、8日(木)の午後2時から、芦屋市立美術博物館(伊勢町)の講義室で、「文豪谷崎と芦屋 『細雪』を中心に」という講座が開催されます。
講師は、谷崎潤一郎記念館の永井敦子さんです。
参加費無料。先着60人とありますが、予約不要で当日おとずれてかまわないようです。詳しくは、同館のホームページで、ご確認願います。
お時間の都合がつくようでしたら、どうぞ。

風邪とインフルエンザには、くれぐれもお気をつけください。

[ 373 ] 2018/02/06 17:38:47 [ 削除 ] [ 通報 ]

373さんお知らせありがとうございます。
大変興味があるのですが、当日所用があり、参加できません。
今後ともよろしくお願いいたします。

[ seitaro ] 2018/02/06 17:54:23 [ 削除 ] [ 通報 ]

遂に西宮ブログ一位になりましたね〜 ☆彡毎回凄い内容ですね☆彡

[ モンセ分店薬局 薬剤師徒然日記 ] 2018/02/07 11:16:51 [ 削除 ] [ 通報 ]

ありがとうございます。でもランキングはもっと下の方が居心地がいいですし、運営者の恣意的なもので定期的に変えられている気がします。閲覧者数もtwitterから推定すると、実際はかなり少ないと思っています。

[ seitaro ] 2018/02/07 13:01:42 [ 削除 ] [ 通報 ]

なるほどね☆彡 しかし、博学ですね 本を読むのが更に楽しくなります これからも楽しみにしています 私も私なりに本紹介やり続けます。大したことは書けませんが.

[ モンセ分店薬局 薬剤師徒然日記 ] 2018/02/07 21:16:06 [ 削除 ] [ 通報 ]

私の備忘録として綴っているだけなのですが、ありがとうございます。モンセ分店薬局さんからのご紹介も楽しみに読ませていただきます。

[ seitaro ] 2018/02/07 22:10:06 [ 削除 ] [ 通報 ]

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谷崎潤一郎『細雪』の冒頭の場面が『平成細雪』でも再現

 谷崎潤一郎の名作『細雪』の冒頭は次のように始まります。

<「こいさん、頼むわ。 ── 」

鏡の中で、廊下からうしろへ這入って来た妙子を見ると、自分で襟を塗りかけていた刷毛を渡して、其方は見ずに、眼の前に映っている長襦袢姿の、抜き衣紋の顔を他人の顔のように見据えながら、「雪子ちゃん下で何してる」と、幸子はきいた。>


さて冒頭の名場面、『平成細雪』では、

まず芦屋の蒔岡分家(実は宝塚市雲雀丘花屋敷にある国登録有形文化財の洋館・正司泰一郎邸)


そこで、襦袢姿の幸子が部屋から顔を出して妙子に「こいさん、ちょっと頼むわ」と。


部屋に入ってきた妙子。


鏡を見ながら刷毛を渡す幸子。


『平成細雪』ではここで襟を塗りながら幸子と妙子の話が始まります。


原作に戻りましょう。

<「悦ちゃんのピアノ見たげてるらしい」

 ── なるほど、階下で練習曲の音がしているのは、雪子が先に身支度をしてしまったところで悦子に掴まって、稽古を見てやっているのであろう。悦子は母が外出する時でも雪子さえ家にいてくれれば大人しく留守番をする児であるのに、今日は母と雪子と妙子と、三人が揃って出かけると云うので少し機嫌が悪いのであるが、二時に始まる演奏会が済みさえしたら雪子だけ一と足先に、夕飯までには帰って来て上げると云うことでどうやら納得はしているのであった。>

『平成細雪』でも原作通り、先に見合いの身支度をしてしまった雪子が悦子のピアノの練習につきあっています。

それにしてもリストの難しい曲に挑戦。


<「なあ、こいさん、雪子ちゃんの話、又一つあるねんで」

「そう、── 」

姉の襟首から両肩へかけて、妙子は鮮かな刷毛目をつけてお白粉を引いていた。決して猫背ではないのであるが、肉づきがよいので堆く盛り上っている幸子の肩から背の、濡れた肌の表面へ秋晴れの明りがさしている色つやは、三十を過ぎた人のようでもなく張りきって見える>

原作『細雪』の幸子のモデルは谷崎松子、『平成細雪』で幸子を演じる高岡早紀はすでに45歳ですが、原作ほどの露出度はないものの、お美しいお肌を少しだけ見せてくれています。


 谷崎潤一郎特有の淫靡さはありませんが、原作の冒頭の場面は、時代を平成に置き換えて忠実に映像化されていました。






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原作を殺さなかった蓬莱竜太の『平成細雪』

 NHK−BSの『平成細雪』1月で終わりましたが、脚本はあの『ピアノの森』の蓬莱竜太で、原作を生かした娯楽番組に仕上がっていました。


 原作の重要な場面も、現代に合わせてうまく登場させています。たとえば、雪子が四女の妙子に爪を切ってもらう場面。

 これは、谷崎潤一郎が「倚松庵」で松子と松子の長女恵美子に加え、妹の重子・信子も引き取り暮らしていた時代、信子が重子の足の爪を切っているのを見て、『細雪』にも描いたと思われる場面です。

<或る日、夕方帰宅した彼は、幸子が見えなかったので、捜すつもりで浴室の前の六畳の部屋の襖を開けると、雪子が縁側に立て膝をして、妙子に足の爪を剪って貰っていた。
「幸子は」と云うと、「中姉ちゃん桑山さん迄行かはりました。もう直ぐ帰らはりますやろ」
と、妙子が云う暇に、雪子はそっと足の甲を裾の中に入れて居ずまいを直した。貞乃助は、そこらに散らばっているキラキラ光る爪の屑を、妙子がスカートの膝をつきながら一つ一つ掌の中に拾い集めている有様をちらと見ただけで、又襖を締めたが、その一瞬間の、姉と妹の美しい情景が長く印象に残っていた。>

三女の雪子が四女の妙子に足の爪を切ってもらっていたのは、写真の部屋の縁側。

小説では六畳の部屋と書いていますが、浴室の前の写真の和室は四畳半です。
 この場面、谷崎の足フェティシズムに繋がる描写でもあり、原作では谷崎特有のエロティシズムを感じさせる名場面です。

『平成細雪』では、原作のようなシーンには仕上がっていませんが、縁側ではなく洋館のベッドで爪を切ってもらう場面を登場させてくれていました。




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見なかったです 残念後悔です・・・・

[ モンセ分店薬局 薬剤師徒然日記 ] 2018/02/05 10:43:15 [ 削除 ] [ 通報 ]

きっとまたその内再放送があると思います。なかなかいいできでした。

[ seitaro ] 2018/02/05 11:59:50 [ 削除 ] [ 通報 ]

次回は是非、なんとしても見たいです。普段テレビを見る習慣が無いので・・

[ モンセ分店薬局 薬剤師徒然日記 ] 2018/02/05 23:45:25 [ 削除 ] [ 通報 ]

twitterで教えてもらいました。再放送が決まったそうです。
プレミアムドラマ「平成細雪」 <総合テレビ>で再放送が決定しました
●第1話 2月20日(火)午前0時15分〜 ※19(月)深夜
●第2話 2月20日(火)午前1時09分〜 ※19(月)深夜
●第3話 2月21日(水)午前0時15分〜 ※20(火)深夜
●最終話 2月21日(水)午前1時09分〜 ※20(火)深夜

[ seitaro ] 2018/02/06 0:10:43 [ 削除 ] [ 通報 ]

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『平成細雪』に登場する夙川

『平成細雪』が4回シリーズで放映中です。


谷崎潤一郎の昭和の『細雪』の原作では、蒔岡家の次女幸子が住む分家は芦屋市内の設定。


四女妙子人形作りの仕事場として借りた松濤アパートは、西宮市相生町十一番地にあって谷崎潤一郎もその一室で執筆したことがある三階建て洋館アパート「甲南荘」をモデルとしています。


『平成細雪』を見ていると、色々な場所でロケをしていますので土地勘があるとしっくりこないこともありますが、夙川の光景もしばしば登場するので楽しく見ています。

 まず阪急芦屋川駅の西にあることになっている蒔岡家の分家は、宝塚市雲雀丘花屋敷にある国登録有形文化財の洋館・正司泰一郎邸が使われています。

電柱には「巴坂一丁目3」と掲示されており、わざわざ撮影のために実在しない住所に張り替えたようです。

 1959年版『細雪』では「こほろぎ橋」が登場し、妙子の人形作りの仕事場は原作のモデルとなった甲南荘の近くに設定されていました。




『平成細雪』では妙子のアトリエとして夙川の上流、「越木岩橋」のたもとの松風町にある古民家を改装したカフェ「茶家」が使われていました。





お店の中で撮影したようです。


 原作には四女妙子が人形作りの仕事場としている夙川の松濤アパートからから啓坊と夙川の土手を歩く様子を次女幸子が目撃する場面があります。
<或る時幸子は、「お宅のこいさんが奥畑の啓坊と夙川の土手を歩いてはったのを見た」と云って、注意してくれた人がいたのではっとした。>
<はじめ幸子は、妙子と奥畑との最近のいきさつを雪子にも誰にも話さずにいたが、或る日又二人が散歩して夙川から香櫨園へ行く途中阪神国道を横切ろうとすると、通りかかった阪国バスから雪子が降りて来て運悪く出会ってしまった>

原作で描かれているこの場面は、国道2号線と夙川が交わる「夙川橋」の光景です。

この場面が『平成細雪』でも登場していました。

この場面には「翠橋」が使われていました。

 これは原作にあるように、二人が人形作りの作業場から夙川を歩く場面なのですが、そのロケ地を知っている夙川の住民にとっては、かなり離れているので「?」となりますが、美しい映像でした。

 因みにgriさんが作成された夙川の橋のイラスト(クリックしてご覧ください)を添付します。

http://nishinomiya.areablog.jp/blog/1000061426/p10738869c.html

人形作りの作業場が設定された「越木岩橋」はこの図の一番上の「北夙川橋」のもう一つ上(北側)にあり、「翠橋」は河口から3番目の橋ですから、かなり離れているのです。




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阪急沿線の街にゆかりのある小説や随筆、アニメの舞台を訪ね、当時の景色や登場人物に思いを馳せるセンチメンタル散歩です。震災以降、街並みは大きく変わりましたが、歴史ある美しい景観を守る一助になればと思っています。

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