阪急沿線文学散歩

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武庫之荘駅を利用する住民意識に揶揄的な註(『33年後のなんクリ』)

「註※人情味と正義感に溢れる関西の下町」の続きです。
尼崎を「人間としての体温の高さを実感する街」と評価していますが、最後に武庫之荘の話がでてきます。
<が、阪急沿線在住者、取り分け武庫之荘駅を利用する市民の中には、他の関西地域の友人・知人に対し、住まいは武庫之荘とのみ語る傾向が強い。大正12年開業の田園調布駅と同じ駅前ロータリーを昭和12年開業当初から設け、阪急電鉄地所課が「阪神間モダニズム」敵住宅分譲を行った名残、と語る向きも。>

 

 武庫之荘駅前のロータリーが田園調布駅に端を発するとは知りませんでした。
確かに、小林一三は名前を出さず、報酬も受け取らず、日曜日のみ、という約束で田園都市株式会社の経営を引き受け、玉川、調布方面の宅地開発と鉄道事業を進めたといわれています。


 淡交社『阪神間モダニズム』にも坂本勝比古氏が「郊外住宅地の形成」の中で、阪急電鉄による住宅地経営として武庫之荘について触れられています。

 

<そのうち武庫之荘の例をみると、駅前にロータリーが設けられ、この駅前から放射状に北西に延びる幅員11メートルの道路とこれに交差する15メートルの道路を軸線として、要所に小公園あるいはポケットパークをつくり、約100坪前後の敷地をもつ10〜12区画のブロックを設け、ユニークな住宅地計画を示した。またそこに建つ住宅も、和洋のモデル住宅がいくつか建てられた>

 


 武庫之荘住宅地案内図を見ると、説明どおりロータリーから北西に延びる道があります。

当時の写真を見ると、なるほど田園調布を思い起こさせる景色です。

 

現在は駅の南側にもあるロータリー。

現在の航空写真。


<この住宅の分譲価格は、当時の資料で、土地、建物、付帯工事共で、一万四千九百五十円、十五年月賦で百十八円八十九銭という、駅前の一等地としては、今では信じられないほど安価であった。>


 昭和12年、武庫之荘駅前148坪の土地付きで14,950円。
先日読んだ小林信彦『うらなり』では、昭和9年の東京ステーションホテルの朝食代金が1円。現在は2,000円ですから、物価は2000倍になったとすると、現在価格で2,990万円となり、広い土地付き一戸建て文化住宅としては比較的安価で、当時の中流の暮しの人々にも手が届く価格だったのではないでしょうか。



文化住宅

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尼崎 | コメント( 8 ) | トラックバック( 0)

震災前には確かにこのパンフレットのような家がありました。

[ ふく ] 2015/05/01 9:57:45 [ 削除 ] [ 通報 ]

実は今まで武庫之荘駅で降りたことがなく、今回初めて田園調布を参考にした住宅開発であったと知りました。

[ seitaro ] 2015/05/01 18:24:55 [ 削除 ] [ 通報 ]

阪急沿線(園田、塚口、武庫之荘)に住まいする者は何故か尼崎とは言いませんね(笑)
 私も家を聞かれると「塚口」って答えます。そして阪神尼崎周辺を尼崎ではなく「尼」と言いますね。
 阪急沿線に住む高齢者は多分そうだと思います。何故かは分かりません。私の小さいときからそうでした。今の若い人はどうなのかな?
 5枚目の写真、武庫之荘の南側ですね。

[ さとっさん ] 2015/05/02 1:42:05 [ 削除 ] [ 通報 ]

面白い記事ですね。興味深く読ませていただきました。

[ たくじろう ] 2015/05/02 6:22:57 [ 削除 ] [ 通報 ]

さとっさん尼崎のお話ありがとうございます。よくわかりました。武庫之荘南側にも立派な噴水ロータリーができており、まぎらわしくて失礼いたしました。

[ seitaro ] 2015/05/02 6:32:55 [ 削除 ] [ 通報 ]

たくじろうさんありがとうございます。武庫之荘の開発の歴史も調べてみると面白いものでした。

[ seitaro ] 2015/05/02 6:36:03 [ 削除 ] [ 通報 ]

武庫之荘の南側は電車から見ているだけでしたが、長らく田圃ばっかりでしたが、急激にマンションがたちました。何之橋を渡っていく本当の武庫之荘ではありませんが、震災後少しだけ駅の南側に住んだことがあります。武庫之荘の歴史というブログ面白いです。http://kubomitsuharu.at.webry.info/200801/article_5.html

[ ふく ] 2015/05/03 9:58:27 [ 削除 ] [ 通報 ]

武庫之荘の歴史、大変詳しく、また地元の方でないとわからないお話もあり、興味深く読みました。

[ seitaro ] 2015/05/03 11:56:20 [ 削除 ] [ 通報 ]

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※人情味と正義感に溢れる関西の下町(『33年後のなんとなく、クリスタル』)

『なんとなく、クリスタル』で文壇デビューした田中康夫氏、2009年には衆議院総選挙兵庫8区の尼崎市から「尼崎のために。日本のために。」と新党日本代表として立候補して当選しています。

どうして尼崎から立候補したのか、よく分かりませんが、今も尼崎市には敬意を払っているようです。

 

 『33年後のなんとなくクリスタル』でも前作同様438に及ぶ※註が面白くおかしく、読み物として構成されています。

 

 その「P119※人情味と正義感に溢れる関西の下町」の脚注が尼崎市なのです。
<※人情味と正義感に溢れる関西の下町:
人口45万人の尼崎市は大阪市西淀川区、豊中市と隣接する兵庫県東端の自治体。市内全域が大阪市と同じ[06]。明治23年の東京、横浜市内と両市間を結ぶ電話サービスから3年後の明治26年に大阪、神戸市内でもサービスが開始された際、現在も尼崎市を登記上の本店所在地とするユニチカ前身にあたる有限責任尼崎紡績会社が自費を投じて敷設を実現。昭和29年に市外局番が導入された際には尼崎市が、大阪市内と同一料金を維持すべく電話交換機等の工事費の一部を負担した経緯で、自治体全域が他府県の市外局番という唯一の事例を今日も保つ。旭硝子の創業地でもある尼崎市には富国強兵・殖産興業の時代に奄美大島、沖縄列島から移住した末裔も多い。下町版“やってみなはれ”の自主自律の気概に充ちた、人間としての体温の高さを実感する街。>
と大層お褒めでした。


 調べると「田中康夫兵庫8区出馬の陰に勝谷誠彦氏」という2009年のブログがありました。
http://blog.livedoor.jp/tuigeki/archives/52406493.html
<前長野県知事の田中康夫参議院議員が、なぜ兵庫8区から出馬するのかナゾだったが、その理由がわかった。田中氏のお友だちでテレビコメンテーターの勝谷誠彦氏が関係しているようだ。勝谷氏は田中県政下でも陰に陽に、さまざまな動きをしていた。尼崎在住の人の話によると、田中氏は以前から白井文尼崎市長と交友があり、尼崎市にもときどき来ていたという。……>

白井文元尼崎市長も華麗なる経歴の持ち主でした。


 田中氏については論客としての才能はあるものの、政治家としての資質となると、コメントを差控えます。

 



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尼崎 | コメント( 2 ) | トラックバック( 0)

seitaroさん、こんばんは。
白井文さんは私が退職時の市長でした。初当選の時は現職で3選を目指す候補者を破り、市民をはじめ、職員も驚きをかくせなかったことを覚えています。
しがらみきった行政機構や人員削減、施設の売却など、初年度から大ナタを振るわれ、赤字再建団体転落を切り抜けたのも事実です。
その良し悪しにはコメントできませんが、尼崎市の事を書かれていたのでコメントさせて頂きました。
田中さんのことについては、退職後数回お話したことがありますが、私もノーコメントで・・・

[ さとっさん ] 2015/04/30 1:01:54 [ 削除 ] [ 通報 ]

さとっさん 白井文さんの市政がどのようなものだったのか存じあげませんが、それなりの実績を挙げられたようで、ご立派です。親和女子、大阪外大、キャビンアテンダント、グンゼ社外取締役と華麗なる経歴に驚きました。(『なんクリ』に登場しそうです)
ご教示ありがとうございました。

[ seitaro ] 2015/04/30 18:07:29 [ 削除 ] [ 通報 ]

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阪急沿線の街にゆかりのある小説や随筆、アニメの舞台を訪ね、当時の景色や登場人物に思いを馳せるセンチメンタル散歩です。震災以降、街並みは大きく変わりましたが、歴史ある美しい景観を守る一助になればと思っています。

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