阪急沿線文学散歩

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安田夏菜『レイさんといた夏』は甲山が見える街が舞台A

 安田夏菜『レイさんといた夏』に登場する甲山の紹介を続けます。
主人公の莉緒と莉緒にしか見えない幽霊レイさんとの会話からです。
<得意そうにレイさんは鼻をひくひくさせたけど、また窓の外を見た。「あの山、なんて名前か知ってる?」いつも私がスケッチしている、お椀を伏せたような山を指さす。夜の暗がりの中、黒い影になった山の輪郭だけが見える。「えっと、なんだっけ。この前ママが名前を言ってたけど……。あ、甲山だよ!」「そっか、甲山か……。なーんか妙に懐かしいような、心がザワザワするような気分やわ」>

夜の甲山。写真は『長門有希ちゃんの消失』第12話にでてきた甲陽園若江町の長門のマンションから見える甲陽園の夜景と甲山です。

『レイさんといた夏』に出てくる甲山は仁川から見た甲山。莉緒の母親とレイさんは共に西宮市立仁川第二中学校に通っていたのです。もちろん実在の中学校ではありませんが、宝塚第一中学校か、宝塚市立仁川小学校がモデルなのかもしれません。

 小説では「お椀を伏せたような山」と表現されていますが、村上春樹の『海辺のカフカ』でも甲山がモデルとなったお椀山が登場します。
<それは私たちがよく遠足にでかける山でした。お椀を伏せたような丸い形をしておりまして、私たちはそれを普通お椀山と呼んでいました。それほど険しい山ではありませんし、誰でも簡単に登れます。>
 さらに上の文章はアメリカ国防省の極秘文書に書かれていたという設定ですので、OWAN-YAMA  Rice Bowl Hillという英語の注釈までついていました。

『レイさんといた夏』に戻ります。
最後は、やはりレイさんとの別れが待っています。
夏休みの最後の日となる8月31日の朝のことです。
<レイさんは、あの空の向こうに行ったのだろうか?床に投げ出したままのスケッチブックを手に取った。開いてぺージをめくる。甲山の絵が何枚か描かれていた。そして次のページには、レイさんを描いた絵が残っていた。真っ茶色の髪。背中まであるロングヘア。耳元には銀色のピアス。斜めにすくい上げるような目つきで、睨むように見つけている女の子の絵。>
甲山を知る人にとっては、心がなごむ小説。

児童書に分類されていますが、大人でも十分楽しめます。



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安田夏菜 | コメント( 4 ) | トラックバック( 0)

今日、読み終えました。
大人が読んでも十分に楽しめる本でしたね。

[ 西野宮子 ] 2016/10/02 15:03:27 [ 削除 ] [ 通報 ]

安田夏菜さんには、これから活躍して、次々、西宮の街を舞台にした小説を出されることを期待しています。

[ seitaro ] 2016/10/02 16:52:58 [ 削除 ] [ 通報 ]

今日、夕方から2,3時間で読んでしまいました。
中学生ぐらいが読むと感動するでしょうね。いい本でした。

[ akaru ] 2016/11/29 23:40:04 [ 削除 ] [ 通報 ]

akaruさん、ブログ拝読いたしました。
まだ若い作家さんのようですが、今後活躍されるよう応援しております。

[ seitaro ] 2016/11/30 16:46:11 [ 削除 ] [ 通報 ]

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安田夏菜『レイさんといた夏』は甲山が見える街が舞台@

 西野宮子さんが紹介されていた西宮を舞台とした児童文学、安田夏菜さんの『レイさんといた夏』を読み終えました。

 著者の安田夏菜さんのプロフィールはあまり明らかにはされていませんが、西宮市生まれ。大阪教育大学卒業。Twitterの自己紹介には、「児童文学界の片隅にひっそり生息しています。『あしたも、さんかく 毎日が落語日和』『ケロニャンヌ』『あの日とおなじ空』など。新刊『レイさんといた夏』もよろしくお願いします!」と書かれています。
https://twitter.com/kanakana623

『レイさんといた夏』は、人付き合いが苦手で、引きこもりがちな莉緒が主人公。東京の中学校で1学期だけを過ごし、西宮市に転校した夏休み、自分の部屋で莉緒だけに見える幽霊レイさんに出会います。自分が何者かわからないから成仏できないと言うレイさんに、夏休みの間、強引に身元探しを手伝わされることになるのですが、阪神淡路大震災が大きな鍵を握っていました。そして私も大好きな甲山の景色がしばしば登場し、莉緒の母親とレイさんの中学時代の記憶に繋がっていくのです。

 西宮に転向してきた莉緒が見る甲山が次のように登場します。

<「これ終わったら、次はスケッチするの。今、あの山描いてるし」窓の外に見える、緑の山を指さす。お椀を伏せたような、ポコッとした形の小さな山。関西に越してきて、唯一気に入っている光景だ。愛用の色鉛筆で山の絵を描いていると、なぜだか心が落ち着いてくる。>
 そうです、西宮に戻ってくると、なんとなくホッとする甲山の景色です。

 莉緒の母親は西宮育ちで、「ああ、あの山。甲山っていうのよ。懐かしい。子どもの頃によく登った……」と莉緒に話します。
莉緒の母親が子どもの頃登った時は、頂上からの見晴らしはどうだったのでしょう。

(写真は今年1月の甲山頂上)

 私の子供の頃登った甲山は、ビスマルク・ヒル。素晴らしい展望が開けていました。


 安田夏菜さんの『レイさんといた夏』は対象が小学上級からとされていますが、甲山が見て暮らす住民にとっては、興味深く読める小説です。皆さん、新人作家を応援しましょう!

『レイさんといた夏』の甲山のお話、もう少し続けます。


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阪急沿線の街にゆかりのある小説や随筆、アニメの舞台を訪ね、当時の景色や登場人物に思いを馳せるセンチメンタル散歩です。震災以降、街並みは大きく変わりましたが、歴史ある美しい景観を守る一助になればと思っています。

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