阪急沿線文学散歩

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関東人にとって芦屋とは?(山口瞳『温泉へ行こう』より)

 あの江分利満氏で御馴染みの山口瞳の昭和60年の温泉紀行『温泉へいこう』、第10話は有馬温泉。

<六甲の桜は蕾だったが、阪神競馬場の桜花賞は満開― 太閤さんも愛した有馬の湯につかり、夜のミナト神戸に繰り出したら……>と始まります。

 太閤秀吉が愛した有馬温泉として有名ですが、その起源は日本書紀にまで記されている程古く、山口瞳は日本最古の温泉ということで、訪れたようです。

<有馬温泉へ行く。温泉紀行を続けるかぎり、この名湯を見逃すわけにはいかない。僕は有馬温泉の上品なところが好きだ。ここは大阪でも神戸でもなく芦屋だという感じがするのである。ところが関西人に言わせるとそうじゃない。関西人のなかに有馬温泉をイカガワシイところと見る人がいる。そのへん、僕はまだわかっていない。>
 関西人としては有馬温泉が上品というのは、なんとなくわかるような気がしますが、そこから、「大阪でも神戸でもなく芦屋」という発想が、理解しがたいところです。

 また、有馬温泉がイカガワシイと言った関西人は何を意味していたのでしょう。有馬には温泉街によくあるフウゾク関係のお店は全くありませんし、そのような表面的な温泉街の雰囲気ではなく、私が箱根温泉にイメージするような秘密裏の男女の隠れ家でもあるのでしょうか。

<新神戸着、三時五十二分。そこからタクシーで約四十分、有馬温泉、“中の坊瑞苑”に到着した。新神戸トンネルが完成して、ずいぶん近くになった。
この旅館は、すばらしい日本建築であったが、神戸ポートピアにあわせて改築された。残念だが仕方ない。>

太閤橋から正面に見えている建物が「中の坊瑞苑」です。
昔の中の坊旅館はどんな日本建築だったのでしょう。

<国際情緒豊かな酒と肉の神戸、上流社会の芦屋、名湯有馬温泉、桜花賞の阪神競馬場、少女歌劇の宝塚が、それぞれ近いということは夢を見ているような思いになる。ここもまた桃源郷か。>
関東に暮らす人にとって阪神間はどうも桃源郷のように映るようです。

山口瞳は有馬温泉から2日間、仁川の阪神競馬場に通っています。

1日目は阪神競馬場で惨敗したあと、仁川駅から電車に乗った山口瞳。

<仁川駅から、阪急で西宮北口まで。電車の網棚に鞄を忘れた。途端にスバル君が疾駆する。その電車、鞄を乗せたまま折り返して宝塚まで行っちまった。僕等夫婦の銀婚式の祝いに梶山季之が買ってくれた双眼鏡。これは金には換えがたいものだ。他に携帯用ラジオ。ウイスキイ。その鞄、宝塚駅の駅長室に保管されているという。「よかった!阪急の客は上等だ」>
桃源郷に暮らす人々の心も上等だったようです。大切なものが返ってきてよかった。




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阪急沿線の街にゆかりのある小説や随筆、アニメの舞台を訪ね、当時の景色や登場人物に思いを馳せるセンチメンタル散歩です。震災以降、街並みは大きく変わりましたが、歴史ある美しい景観を守る一助になればと思っています。

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