阪急沿線文学散歩

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椹野道流『最後の晩ごはん』第二作の舞台は芦屋市ルナ・ホール

 椹野道流『最後の晩ごはん』第二作「小説家と冷やし中華」では、「ばんめし屋」の上顧客である小説家淡海五朗の妹の幽霊が登場します。


 淡海五朗のかつての教え子が「劇団バーサンズ」を立ち上げ、ルナ・ホールで朗読劇『安寿と厨子王』を上演することになります。
<「そうそう!実は彼女たちがね、来月、発表会を開くんだ」「発表会?朗読の、ですか?」「うん。友達や家族に、自分たちの朗読を聞いてほしくなくなったんだってさ。JR芦屋駅近くにルナ・ホールってあるの、知ってる?」海里はちょっと考えてから曖昧に頷いた。「たぶん、あれのことですよね。国道二号線を超えて、芦屋川ぞいにずーっと上がっていくとある、コンクリートにちょっとツタが張った建物」「そうそう、それ」「結構立派なホールじゃないですか、あそこ」「そうなんですけどね、借りるのはあくまでも小ホールだから、舞台として平台を置いたら、詰め込んでもせいぜい百人くらいしか入らないんじゃないかな。勿論、そんなに人は来ないだろうけど」>

 芦屋川ぞいに立つ、坂倉建築研究所設計のルナ・ホールです。

 写真を撮って気が付きましたが、芦屋市は六麓荘に限らず、市街地の無電柱化を進めているそうで、ルナ・ホールのある芦屋川沿いには電柱がなく、美しい写真が撮れました。

 
 この後、「ばんめし屋」の上顧客である小説家淡海五朗の複雑な出自と、異父兄妹で、高二のときに、居眠りトラックに轢かれて亡くなった妹の純佳の存在が明かされます。
<それから四日後の日曜日。いよいよ、発表会当日である。ルナ・ホールの小ホールでは、貸出時間の午後一時から、夏神と海里、それに淡海が会場設営を始めた。淡海は、数日前のことなど忘れたようなひょうひょうとしたいつもの態度を保っており、夏神と海里も。彼の妹の幽霊については、何一つ口に出しはしなかった。ホールの一角に平台を置いて小さな舞台を作り、舞台と客席に椅子を並べ終わるころ、絶妙のタイミングで本日の主役、劇団の面々が到着した。>

ルナホールの小ホールです。

 壁面が鏡になっており、普段ダンスの稽古などにも使われるそうです。演劇などは、カーテンを閉め、前に平台を置いて、会場にパイプ椅子を並べ上演するそうです。

スポットライトを点けてもらうとこんな雰囲気になりました。
 小説には、借りるときの費用や様子が詳しく書かれており、椹野道流さんは実際にお使いになったことがあるのではないでしょうか。
 第二作は兄妹の互いに思いやる心が描かれた泣けるストーリーになっていました。



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椹野道流『最後の晩ごはん』に登場する芦屋神社

 椹野道流『最後の晩ごはん』の第一話「ふるさととだし巻き卵」で、主人公五十嵐海里が、芦屋神社の近くに住む「ばんめし屋」の上顧客で小説家の淡海五郎に定食を届けるシーンが描かれています。


 深夜に、海里はスクーターで芦屋神社への坂道を上がっていきます。
<そんなことを考えながら坂を上がっていると、左手に石造りの柵のようなものが見えてきた。あっと思うと、すぐにちんまりしたコンクリート製の鳥居があった。夏神に持たされたLEDのハンディライトで照らしてみると、「芦屋神社東参道」と書いてある。うっかり目的の家を通り過ぎ、芦屋神社まできてしまったらしい。なるほど、右手を見ると、公園らしき闇が広がる。>

芦屋神社東参道入口です。

<「行き過ぎた。神社より、ちょこっと下がるんだよな」スクーターを反転させ、今度は注意深く低速で走らせながら、海里はハンディライトを片手に、道路からやや奥まった場所に門扉のある家に、「淡海」という表札がかかっていた。どうやらここが、目指す小説家の邸宅らしい。>

振り返ると、芦屋浜まで見えていました。淡海の邸宅はこの四つ角の下の右手あたりにあるお邸を設定したようです。

芦屋神社については次のように紹介されています。
<「お隣の芦屋神社には、大昔のお墓があるからね〜。ちょっと怖いかもね〜」「ひッ。う、嘘でしょ?」>

芦屋神社には猿丸大夫のお墓もあります。


<「ホントだよ。知らない?芦屋神社の敷地内には、小さな古墳があるんだ。石室だって残ってる。今はその石室には芦屋川のずっと上の方から水神様を移してきて
お祀りしてるんだよ」「へ、へえ……」思わず首を縮こめた海里に、淡海は済まなさそうに片手をひらひらさせた。
「ごめん、ごめん、無駄に怖がらせちゃったかな。嘘、ホントは別に怖くないよ。水神様といえば、田の神、山の神だもの。人間に不可欠な水を恵んでくださる神様だから、君もちょっと外から拝んでいくといい。いい水の流れに乗れるかもしれないよ」>

芦屋市指定文化財になっている境内にある古墳です。


現在は、小説にも書かれているとおり、水神様が移され、祀られています。


 芦屋の丘の上の閑静なお屋敷街にある芦屋神社、文化財もあり、一度お参りされてはいかがでしょうか。駐車場もありました。

 さて、海里は芦屋神社の向かいにある公園で、次の登場人物(とは言わないかもしれませんが)眼鏡の付喪神のロイドに出会うことになります。

公園から不思議な声が聞こえてきます。
<またもや同じ声が聞こえたのは、公園のほうだ。公園内の生け垣沿いに建つ、内部に蛍光灯が点いているコンクリート製の小さな建物は、たぶん公衆便所だろう。そこに誰か入っていて、海里に声をかけてきたのだろうか。>

公園のトイレです。


 助けてほしいというロイドの声に海里は辺りを見回しますが、見つかりません。
<「あなた様の真ん前にございます階段の右手の繁み、その根元を、慎重に照らしてみてくださいませ」「階段……?」確かに目の前には、道路より高い場所に設えた公園に向かう、八段ほどのコンクリート製の階段がある。幅はわりあい広く、中央にはステンレスの手摺りがあった。階段の両側には石垣があり、コンクリートで土留めをして、塀に沿うようにツツジか何かだと思われる丈の低い、刈り込まれた植栽がある。>

小説に書かれている通り8段の階段がありました。

この右側の植栽の根元に捨てられていたセルフレームの丸い眼鏡の付喪神がロイドだったのです。拾われたロイドはこれ以降、海里を主人と呼び、時々人間の姿になって現れます。
このように付喪神が登場するのも、法医学教室の監察医を務められた椹野道流さんの経験から生まれたのでしょうか。



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芦屋神社、杉山平一先生ゆかり(「星」といういい散文詩があります)の神社なので、6・7年前に一度取材に行きました。

[ akaru ] 2017/05/09 8:09:06 [ 削除 ] [ 通報 ]

そうなんですか。今度探して読ませていただきます。
芦屋神社はあまり馴染みがありませんでしたが、なかなかいい神社でした。

[ seitaro ] 2017/05/09 18:07:13 [ 削除 ] [ 通報 ]

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芦屋で知る人ぞ知る名店「ばんめし屋」(椹野道流『最後の晩ごはん』)

 椹野道流『最後の晩ごはん』では、ねつ造スキャンダルで活動休止に追い込まれ神戸に戻った若手イケメン俳優の五十嵐海里は芦屋の定食屋の夏神留二に救われ、彼の店で働くことになります。


 その「ばんめし屋」は次のように紹介されています。
<芦屋にある、知る人ぞ知る名店。店長の夏神がひとりで切り盛りする。営業時間は日没から日の出まで。メニューは日替わりで一種類のみ。その味に惚れ込み、常連になる客は多い。>

「ばんめし屋」の所在地は、第三話「お兄さんとホットケーキ」の第一章にわかりやすく書かれていました。
<兵庫県芦屋市。六甲山と大阪湾に挟まれ、神戸市に隣接するこの小さな街には、東西方向ほぼ並行に、三本の線路が走っている。その中でもいちばん南……いや。ご当地に言えば海手を走る阪神電車芦屋駅からほんの少し北上したところにあるのが、芦屋警察署だ。
 愛想の欠片もない鉄筋コンクリートの建物だが、一角だけは、かつての壮麗な庁舎の玄関部が残されているのが、何とももの悲しく、印象的である。>

 芦屋警察署は昭和2年に建てられた旧建物の玄関と正面ファザードを保存する形で平成13年に立替られたものです。旧建物と新築部分があまり違和感なく繋がれています。

 玄関アーチの上部でフクロウが往来に睨みを利かせていますが、夜行性なので夜警、寝ずの番という意味だそうです。

<一方、警察署から芦屋川沿いに北上、すなわち山に向かって歩いて行けば、緑がかった尖塔の屋根が目印のゴシック風建築、カトリック芦屋教会が見えてくる。>

設計は、建築家の長谷部鋭吉氏によるもので、戦後昭和28年に竣工しています。

<そして、そんな二つの対照的な建物の間にある、典型的な昭和の木造二階建て住宅。それこそが、この物語の舞台である。一見、古い民家とおぼしきその家の玄関には、「ばんめし屋」と書かれた木製のプレートが掲げられている。>

芦屋警察と芦屋カトリック教会の間の芦屋川沿いの風景です。椹野さんは、よくこんなところに、「ばんめし屋」を設定したものです。

 広報あしや3月1日号のに椹野さんのインタビュー記事が大きく掲載されており、その中でもう少し詳しく、「ばんめし屋」の場所が説明されています。
<芦屋税務署の横にある駐車場あたりの設定です。世間では「芦屋に住んでいます」というと山手に大きなお屋敷がある、お金持ちのまちのイメージが強いので「あーっ、あの芦屋」と言われます。でも、本当は普通の住宅が立ち並び、親しみやすい飲食店があちこちにある庶民的なまちなので、そいう芦屋を紹介したいと思い阪神沿線を中心に書いています。>

芦屋税務署前のタイムスの駐車場に設定したそうです。

航空写真の矢印の位置になります。

「芦屋歩記」のアプリ(無料)を入れると、下のような画像が見れるそうです。

 芦屋市(政策推進課、経済課、芦屋市商工会)のこのような文学作品に対する力の入れようは、他市に抜きんでています。



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椹野道流『最後の晩ごはん』主人公五十嵐海里の実家は東灘区岡本

 芦屋を舞台とした小説『最後の晩ごはん』の第一作は「ふるさととだし巻き卵」。捏造されたスキャンダルで活動休止に追い込まれた若手イケメン俳優の五十嵐海里は、全てを失い、郷里の神戸まで戻ります。


海里はJR摂津本山駅から実家のある岡本まで歩いたようです。

<それから五時間後、海里は実家の最寄りの駅に降り立った。兵庫県神戸市の、JR摂津本山駅。青い瓦屋根の、一見、一般家屋のような駅舎が懐かしい。ミュージカル俳優になるため一度も帰ったことのない故郷の駅である。各駅停車しか停まらない、どこか田舎じみた雰囲気のあるこぢんまりとした駅だが、何故か駅前のロータリーだけは立派で、周囲には嫌というほど様々な店舗が立ち並んでいる。>

 小説に描かれているレトロな青い瓦屋根の旧北口駅舎は2012年に解体されてしまいました。


現在のJR摂津本山駅は整備され駅ナカ店舗もできています。


駅を出た海里は、天上川沿いに北に上って行きます。

<コンクリートで固められ、やや貧弱な水量が悲しい天上川沿いに、この辺りの人間がナチュラルに使う表現で言えば「山側」、つまり六甲山系が見える北側に向かて、緩い坂道を上がっていく。高校時代、毎日通った道のりだ。>

いつごろからでしょうか、天上川には、上流にある六甲山系の山から野生のイノシシが度々下ってきて問題となっています。


 この川沿いの道は、早川茉莉さんが『エッセンス・オブ・久坂洋子』でも次のように述べられていました。

<お気に入りのカフェをめざして、川べりの道を歩いている時、目指す道の視界の先に小豆色の阪急電車をとらえた瞬間、私はふいに彼女の気持ちが分かるような気になったりしたこともあるのです。>


『最後の晩ごはん』に戻ります。海里は更に上って阪急の高架下をくぐります。

<阪急電車の高架を潜り、さらに坂道を上がり続けて、昔からある診療所のある角を斜め左に曲がる。典型的な住宅街を東から西へ向かってひたすら歩いていくと、そのうち、南北に走る十二間道路という幹線道路にぶち当たる。>


診療所とは園田医院のことのようです。

<そこからほんの少しだけさらに西へ行ったところで、海里は足を止めた。少し古びた白い低層マンションの横にある、鬱蒼とした木立。その向こうに見える赤茶けた屋根の一軒家が、海里の今の実家である。>

十二間道路の突き当りの交差点からもう少し西に行ったところが海里の実家に設定されています。椹野道流さんはこの辺りに住まれたことがあるのかもしれません。

 



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芦屋を舞台とした小説『最後の晩ごはん』と謎の作家・椹野道流

 芦屋を舞台とした小説『最後の晩ごはん』シリーズが阪神間で人気を呼んでいます。


 小説を読んで、作者の椹野 道流さんとはどんな人だろうかと興味を持ったのですが、
Wikipediaでも
<日本の法医学者・小説家。兵庫県出身。血液型はO型。四緑木星。デビューから数年はとある医科大学の法医学教室に籍を置く、非常勤の監察医だった。現在は専門学校で教壇に立つかたわら、作家活動をしている。特技は一弦琴。中原中也が好きで、ペンネームの「椹野」は椹野川に由来する。>
とのみ。
 年齢、性別不詳でしたが、第1回兵庫医科大学フォーラムでのご講演の写真や、Twitterに椹野さんの雑誌のインタビュー記事の写真があり、女性であることがわかりました。

(写真はamazonの著者紹介より)

インタビューでは、
<医科大学を卒業して、すぐに法医学教室に入りました。大学院生を経て助手になり、兵庫県の非常勤監察医も経験させていただきました。司法解剖や行政解剖でたくさんのかたがたの死やご遺族の感情に触れたことが、小説を書き続ける動機の一つとなりました。経験したそのままではありませんが、人の死にまつわることを書き続けていきたいです。今は現場から退き、医療系専門学校などで、解剖学、公衆衛生学、法医学を教えています。>
と述べられています。
 大変な経歴をお持ちの作家であり、小説に幽霊まで出てくる理由がわかったような気がします。
しばらく小説の舞台を訪ねてみましょう。


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阪急沿線の街にゆかりのある小説や随筆、アニメの舞台を訪ね、当時の景色や登場人物に思いを馳せるセンチメンタル散歩です。震災以降、街並みは大きく変わりましたが、歴史ある美しい景観を守る一助になればと思っています。

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