阪急沿線文学散歩

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『風よ僕らに海の歌を』神戸沖自沈未遂後の「カリテア号」の運命

 増山実『風よ僕らに海の歌を』はタカラジェンヌも御用達のイタリアン・レストラン宝塚南口「アモーレ・アベーラ」の創業者オラッツィオ・アベーラ(小説ではアリオッタ)さんをモデルにした物語。


 アリオッタが任務に就いていたイタリア軍の戦艦「リンドス号」は、日独伊三国同盟により日本軍占領地に物資を輸送する任務に就いていましたが、船が神戸に寄港中の1943年9月8日、イタリア政府は突如、連合国に「無条件降伏」を発表します。
<イタリア本国からリンドス号に指令が届いた。「日本軍と戦うか、さもなくば自沈せよ」昨日までの味方であった日本軍と戦うか、さもなくば武器を捨てて投降せよ。現場に混乱をもたらす、あまりに唐突で、矛盾をはらんだ指令だった。九月九日午前六時。艦長は自沈用の注水弁を開いた。>
 ここからアリオッタの数奇な運命が始まるのですが、この神戸沖で1943年に自沈した「リンドス号」のモデルとなった「カリテア号」の運命も調べてみると数奇なものでした。

元々の船名はRamb II。1937年進水。ソマリア〜イタリア〜南西ヨーロッパを航行するバナナの輸送船として建造されました。
1940年にイタリア海軍に徴用され、特設巡洋艦となります。艦長:C. Mazzella
1941年に「カリテア号」と改名。

小説では次のように紹介されています。
<父の乗っていた船の名前は「リンドス号」です。もともとはアフリカで穫れたバナナを欧州に輸送する、民間の会社の船だったそうです。それが戦争で「特務艦」としてイタリア軍に徴用されたんです。>

そして、
<「リンドス号」が紅海あたりを航行していた時、戦況が激しくなり、そのあたりの制海権をイギリス軍が握ったんです。父たちの船はイタリアに帰ることもできず、追ってくるイギリス軍からひたすら逃げ、インド洋を経て、南方までやってきました。そこで同盟を結んでいる日本軍の南方物資輸送船として転用されることになり、父たちイアリアの兵士は、そのまま乗組員として、アジアの海域を航行していたということのようです。>
このお話は、殆ど史実に則ったもののようで、「カリテア号」は1942年には日独伊軍事協定に従い日本海軍の管理下に置かれ、川崎重工で冷蔵庫増設工事の後、給糧艦として帝国海軍に協力し、南西方面司令長官の区処下に入り南西方面にて使用されます。

 さて、小説では1943年9月の神戸沖での自沈で終わる「カリテア号」ですが、その後直ちに日本軍によって引き上げられ、接収。1943年10月に「生田川丸」と命名され、11月に佐世保鎮守府所管の特設運送船(給糧船)となります。
 その後聯合艦隊南西方面艦隊所属の特設運送船として南方への輸送に携わりますが、1945年1月サイゴン港内右岸で米第38機動部隊艦載機による空爆で沈没してしまうのです。

上の写真は米第38機動部隊

 1937年にイタリアで進水したバナナ輸送船は、イタリア海軍、日本帝国海軍へと籍を移し、1945年にサイゴンで米軍により撃沈という、8年間の短いながらも波乱に富んだ運命を辿ったのでした。





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増山実『風よ僕らに海の歌を』のモデルとなった宝塚のリストランテへ

 増山実『風よ僕らに海の歌を』は史実をモチーフにしており、主人公ジルベルト・アリオッタは、数奇な運命をたどり、戦後間もなく宝塚にイタリアン・レストラン・アベーラを開いたオラッツィオ・アベーラさんがモデルとなっています。


 アベーラさんは、第二次世界大戦中はイタリア軍の軍人として輸送艦「カリテア号」に乗り込んでいましたが、1943年、神戸港に停泊していたときに、イタリアが降伏したため、アベーラさんたちイタリア兵は日本軍の捕虜となってしまいます。
 その後、姫路の捕虜収容所に入り、戦後に武庫川河畔の武田尾温泉で知り合った日本人と結婚し、1946年湯本町の蓬莱橋近くに「イタリアンレストラン・アベーラ」を開業したそうです。

 現在のお店は宝塚南口駅近くの閑静な住宅街にあり、オラツィオさんが帰天した後の1971年に“アモーレ・アベーラ”として元の自宅を改装して移転した店舗で、子息のエルコレ・アベーラさんがオーナーとなり、父親から伝授したシチリア風テイストを受け継いでおられます。

芝生の庭を見ながらの席もよさそうです。

 店内に入ると、創業者で『風よ僕らに海の歌を』のモデルとなったオラッツィオ・アベーラさんの写真が掛けられていました。

 幾つかのお部屋があるようですが、80席の収容力があり、お昼に伺いましたが、ほぼ満席でした。

 評判のピザも魅力的でしたが、今回オーダーしたのは「アベーラランチ」。

焼きたての柔らかいグリッシーニは初めての味でした。

前菜は生ハムとメロン。

アサリのスパゲティは、貝柱も大きなアサリでトマトソースも美味しくいただきました。

メインはシュニッツェル

ドルチェは抹茶のアイスクリームと苺のケーキ

 食べログでも3.55の評価で、お店の雰囲気も味も、十分満足できました。
さすが日本で一番歴史のあるイタリアンレストラン、その歴史を知るとファンになってしまいます。



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『人生で予想できることがひとつだけある。それは、予想もしないことが起こるということだ』
https://www.facebook.com/masaichi.yokoi1/posts/1561727780524243?pnref=story

[ 笹舟倶楽部 ] 2017/06/11 23:47:11 [ 削除 ] [ 通報 ]

以前、紹介していただいた「勇者たちへの伝言」を読んでから増田実さんのファンになりました。「風よ僕らに海に歌を」もぜひ読んでみたいし、「アモーレアベーラ」のランチもいただきたいです。

[ mamimi ] 2017/06/12 10:23:46 [ 削除 ] [ 通報 ]

「風よ僕らに海に歌を」は史実に基づいたストーリーで面白く、その舞台をもう少し訪ねてみるつもりです。

[ seitaro ] 2017/06/16 6:27:42 [ 削除 ] [ 通報 ]

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増山実さんの最新作『風よ僕らに海の歌を』宝塚のアモーレ・アベーラがモデル

 『勇者たちの伝言』でお馴染みの増山実さんの最新作『風よ僕らに海の歌を』が本日より店頭に並び始めました。


帯には次のように内容紹介されています。
<第二次世界大戦時、日伊共同の任にあたっていたイタリア海軍の特務艦が神戸沖にいた。
その名は「リンドス号」。乗組員の料理を担当していた兵士にジルベルト・アリオッタという男がいた。しかしイタリア政府の突然の降伏で彼は祖国へ帰る道を絶たれる。
戦後まもない宝塚でイタリア料理店を始めるジルベルトと家族たち。見慣れぬ料理は宝塚の人々を魅了していく。戦争に翻弄されながら、激動の昭和を生き抜いてきた親子二代の軌跡。彼らと交錯する、様々な人生。史実をモチーフに異郷に生きる人々の絆を描く感動のストーリー。>

 ブログで『勇者たちの伝言』の紹介をしたことがきっかけとなり、本日増山実さんにお会いし、お話する機会を得ました。

 まだ読み始めたばかりですが、宝塚が舞台の昭和18年からの物語。小説ですから、登場人物など名前が変えられていますが、これから事実と比べながら舞台を散策するのが楽しみです。


ちなみに、小説に登場する昭和21年創業の宝塚のイタリアン・レストラン「ITALIANO RISTORANTE ALMONDE」とは、現在宝塚南口にある「RISTORANTE AMORE ABELA」がモデルとなっているようです。
早速、行ってみなければ。



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いつもブログを見るのを楽しみにしています☆これからも楽しく読ませて頂きますね!

[ 新宿の美容室 美容院といえば mod's hair 新宿サウス店 【モッズ・ヘア】 ] 2017/06/01 22:18:02 [ 削除 ] [ 通報 ]

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阪急沿線の街にゆかりのある小説や随筆、アニメの舞台を訪ね、当時の景色や登場人物に思いを馳せるセンチメンタル散歩です。震災以降、街並みは大きく変わりましたが、歴史ある美しい景観を守る一助になればと思っています。

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