阪急沿線文学散歩

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昭和3年の芦屋の風景(中山正子『ハイカラに、九十二歳』)

 写真家中山岩太夫妻は昭和3年の夏、夏休み中だけのつもりで、子供を連れて芦屋に来ます。借家でののんびりした海辺の生活が気に入った夫妻は翌年家を建てて本格的に引っ越しました。

 中山正子著『ハイカラに、九十二歳 写真家中山岩太と生きて』に当時の芦屋の様子が述べられています。
<芦屋というところはパリーの町によく似て、気候もあまり変化のない静かな美しい町だ。たくさんの松に囲まれている。みどりが多い。朝早く起きて朝露を踏み、松林の中に松露を集めることができるという東京の町中では味わえぬたのしみでもでもある。>

芦屋公園にはまだ少し松林が残っていますが、昭和の初めには松露がとれたとは。


<静かな流れの芦屋川沿いには松や柳の並木道がある。夕暮れともなるとカジカの声も聞かれる。たくさんのホタルが飛びかう。川沿いには立派な家が並んでいる。ここは大阪の商人さんたちの別荘地でもある。>

現在の芦屋川。

<海岸は広々としている。水着のままで家から行くことができる。波も静かだ。ただ貝殻やガラスのかけらが多くて足をいためるので足袋をはく。きれいな貝もある。ホウズキも流れついている。そして別荘に住む夫人たちが美し水着を着て、海に入るでもなく、犬を連れて歩くあでやかな姿も目につく。>

昭和の初めの芦屋浜。

犬を連れる夫人の姿がありました。
芦屋は当時から高級住宅地としての名を馳せていたようです。

平田町のシンボル的な存在であった旧田中岩吉邸も今やなくなってしまい、風光明媚でハイソな芦屋の風景も大きく変わっています。
次回は中山邸の跡は現在どうなっているか、確かめにいってみましょう。





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阪急沿線の街にゆかりのある小説や随筆、アニメの舞台を訪ね、当時の景色や登場人物に思いを馳せるセンチメンタル散歩です。震災以降、街並みは大きく変わりましたが、歴史ある美しい景観を守る一助になればと思っています。

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