阪急沿線文学散歩

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西宮が舞台となった最新の小説『ニュー香枦園パークハイツ』

 2018年1月にリトル・ガリバー社より出版された加藤克信著『ニュー香枦園パークハイツ』には「阪神・淡路大震災を克明に描写した、記錄小説である」という出版社からのコメントがつけられています。


 筆者も被災し、住んでいたマンションは倒壊寸前となり、再建組合により再建が決まりますが、再建を待たずに、マンションを手放し、去ら人もいます。
 その一人となった主人公の今岡は筆者自身をモデルにしたのでしょう。小説では、当時の自動車シート製造会社での経験などがフィクションを交えて生々しく語られています。

 筆者の加藤克信氏の経歴は1965年生まれ。浜脇中学校卒、西宮今津高校卒、神戸電子専門学校卒。紳士服屋、行政書士事務所、自動車シート製造会社を経て、介護福祉専門学校中退、大阪文学学校卒、現在社会福祉事業団でアルバイト。現在は同人誌「雑記囃子」を発行されています。

 
 加藤氏が卒業された大阪文学学校といえば、芥川賞を受賞した田辺聖子や玄月、直木賞を受賞した朝井まかてらを輩出した文学学校。期待の新人でしょうか。

リトル・ガリバー社による著者インタビューでは、
<これまでもいろいろな人間関係になじめず、ぎくしゃくしたことが多かったし、それに耐えてきたから人一倍忍耐力がついたのだと思います。
人生「7転び8起き」といいますが、私の場合は「29転び30起き」ぐらい挫折があって「何で俺ばかりこんな酷い目にあわなあかんねん」という悔しさが持続力になっていると思います。>と語られ、相当の苦労人のようです。

 さて「ニュー香枦園パークハイツ」とは実在のマンションをモデルにしています。
場所については次のように書かれていました。

<風東町は阪神香枦園駅から南に二分、阪神高速道路を超えたオアシス道路沿いにあった。南五百メートル、東に五百メートルの正方形の町で五百世帯は住んでいた。星野のマンションはその正方形の形の北西の角地にあり、香枦園駅からは南にすぐ見えた。>

 どうも風東町とは下の地図で四角く囲んだ川東町のことのようです。

 この位置のマンションを見てみると、「夙川グランドハイツ」、築年月日は1998年4月となっており、震災後建て替えられた物件でしょう。

現在は14階建てとなっています。

一階には内科や歯科も入っているようです。

 小説に登場する「ニュー香枦園パークハイツ」は震災の起こった1995年には、築27年になっていた豪華マンション。震災前までの道路の発展の様子が次のように述べられています。
<今岡のマンションは西宮市の香枦園にあり、八階建てのマンションはこの香枦園地区で一番高くそびえていた。初めはコの字型をした「コ」の真ん中に噴水があってその噴水が毎日水をあげて豪華さを演出していた。その前には大阪と神戸を結ぶ四十三号線が走り、次第に上に阪神高速道路が出来始め、防音対策として二重扉やクーラーが各部屋にに設置され昭和五十年頃に有料道路である阪神高速道路が完成した。>

現在のマンションはコの字型でもなく、噴水もありません。

左側の防音壁が国道43号線。その上を阪神高速が走っています。

そのそばには、現在は何もなかったかのように静かに夙川が流れています。





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香櫨園 | コメント( 4 ) | トラックバック( 0)

私も震災の時はマンションに住んで8階でした、書庫は10階にあったのですが 10階の書庫がささえもつっかえも何もしてなかったので滅茶苦茶でした。当時幼稚園に行く前の子供が「これ誰がかたづけんの?」(家も店も)と素直な気持ちで言ったのですが・・・今は本当に当時の面影はないですね〜

[ モンセ分店薬局 薬剤師徒然日記 ] 2018/06/04 9:38:50 [ 削除 ] [ 通報 ]

書庫があるマンションとは豪華マンションのご様子。でも大変だったこととご察しいたします。私は当時西宮に住んでいなかったので、西宮ブログで震災関連の本を紹介するときは心苦しく、生々しい場面の引用は避けております。お許しください。

[ seitaro ] 2018/06/04 9:53:44 [ 削除 ] [ 通報 ]

 本がやたらとあったので住んでいる部屋とは別に10階も買って書庫や物置にしました。引っ越すときにマンションのごみ置き場に我が家のごみを出したのですが・・・私の家のゴミだけでマンションのごみ置き場が溢れかえりました。

[ モンセ分店薬局 薬剤師徒然日記 ] 2018/06/05 7:51:03 [ 削除 ] [ 通報 ]

凄い量の本をお持ちだったのですね。さすがです。

[ seitaro ] 2018/06/05 14:08:56 [ 削除 ] [ 通報 ]

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阪急沿線の街にゆかりのある小説や随筆、アニメの舞台を訪ね、当時の景色や登場人物に思いを馳せるセンチメンタル散歩です。震災以降、街並みは大きく変わりましたが、歴史ある美しい景観を守る一助になればと思っています。

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