阪急沿線文学散歩

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遠藤周作がカトリック夙川教会の思い出を書き綴った『黄色い人』

 『黄色い人』は遠藤周作が日本人としてのカトリシズムに対する悩みを小説にした初期の作品です。その舞台は仁川のカトリック教会なのですが、特高に連行されたブロー神父などの登場人物や逸話は、遠藤周作が受洗したカトリック夙川教会をモデルにしている考えて間違いありません。


 例えばこんな情景が描かれています。
<教会の庭には夾竹桃の赤い花が咲き、公教要理をならう子供たちが伝道婦のアヤさんと口をそろえて唱和している声が聞こえました。「天主の十戒とはなんですか」「天主の十戒とは……」子供のころ、ぼくもこの児童たちと同じように、若い仏蘭西人の司祭だった貴方から天主の存在を教えられ、その十戒を暗記させられたものです。その時も夾竹桃の花が赤く咲き、貴方の黒い修道服のローマン・カラーが真白だったのを覚えています。>
 遠藤周作がカトリック夙川教会で受洗したころの情景を小説に描いているのですが、夾竹桃が記憶に刻まれているようです。
 現在のカトリック夙川教会には、夾竹桃は一本も残っていませんが、遠藤が通っていた頃の写真を見ると、塀のところに夾竹桃が植えられていたことがわかります。


 またここに登場しているアヤさんは「伝道婦兼聖母幼稚園の保母のアヤ子さん」ですが、戦前は下の写真の赤矢印の位置に幼稚園が併設されていたのです。


 下の写真は遠藤周作が教会でしょっちゅういたずらをしてメルシェ神父から怒られていた頃の昭和13年のメルシェ神父と幼稚園児たちの写真です。

右端に写っている保母さんのどちらかが伝道婦のアヤさんのモデルかもしれません。

 ところで夙川カトリック教会の聖堂はブスケ神父が敬愛してやまなかった聖テレジアに献げられ、以後夙川教会は「幼きイエズスの聖テレジア教会」と呼ばれています。

 そのテレジアの名前が『黄色い人』のデュランの日記にも登場します。
<司祭であったころ、私はたびたび臨終の場にあたった。なくなった堂本さん、斎藤夫人、それから私があの頃、「小さき花のテレジア」といって、だれよりも可愛がった鮎子ちゃんに終油の秘蹟をあたえたのは、この私である。>

 初代主任司祭のブスケ神父は、「小さき花」と題した聖女小さきテレジアの自叙伝の翻訳、出版もされていました。
 
 ひょっとすると遠藤周作の記憶の中に、メルシェ神父から「小さき花のテレジア」と呼ばれていた可愛いい女の子がいたのかもしれません。





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阪急沿線の街にゆかりのある小説や随筆、アニメの舞台を訪ね、当時の景色や登場人物に思いを馳せるセンチメンタル散歩です。震災以降、街並みは大きく変わりましたが、歴史ある美しい景観を守る一助になればと思っています。

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