阪急沿線文学散歩

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6月の読書会はカズオ・イシグロ『わたしを離さないで』

 先日カズオ・イシグロさんにナイト爵位が授与されることになったことが報道されていましたが、6月の読書会の課題図書は『わたしをを離さないで』。


 映画にもなっていますが、いわば近未来のSF小説。

 医学の発展は目覚ましく、現在では上の図のようなデザイナー・ベイビーの誕生も可能になっています。

 さてイシグロはどうしてこのように、作品ごとにまったく異なった舞台設定ができるのか不思議に思っていましたが、NHK-BSの二つの番組『カズオ・イシグロ 文学白熱教室完全版』、『ノーベル文学賞 カズオ・イシグロが語る世界』を見て、その思考方法がよく理解できました。


 特に「自伝的小説には興味がなかった。小説には事実だけでは伝えられない重要な真実が含まれている」が印象的な言葉でした。
 ここでイシグロが伝えたい「真実」とは何でしょう。
「人間性や人間の経験に関する普遍的な真実について語る作家になりたかった」

更に『わたしをを離さないで』については

「若者たちにも老人のように命に限りがあるという物語が書きたかった(命とは何か、愛と友情)」と述べており、そこに描かれた嫉妬、羨望、差別、秘密を抱えた人間関係などがイシグロが描きたかった人間の真実ではないでしょうか。

 そして「提供者」にとって、提供の猶予がもらえるかもしれないというかすかな希望が最後に打ち砕かれるというのも、生命に限りがあること、人間が最後に直面しなければならない問題を語っているように思えます。

 創造の世界でありながら、現実の物語のように思わせるイシグロの描写力、手法はさすがノーベル賞作家です。






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阪急沿線の街にゆかりのある小説や随筆、アニメの舞台を訪ね、当時の景色や登場人物に思いを馳せるセンチメンタル散歩です。震災以降、街並みは大きく変わりましたが、歴史ある美しい景観を守る一助になればと思っています。

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